症例A
★2008年12月9日の記事を再掲

“精神医療”と“博物館の真贋をめぐる謎”とが交互に語られていく物語。テーマが専門的なので、多少説明臭いところが多いけど、退屈に感じることもない。読んでいくうちに引き込まれていき、先が気になってしょうがなかった。

統合失調症(分裂症)、境界例、解離性同一障害(多重人格)を扱っていることもあり、かなり既視感を感じながら読んだけど、なかなか面白かった。ただ、ラストが消化不良気味、おしいなぁ。

精神分析や心理学などに興味がある人が読んだら、適度に知的好奇心を満たしてくれて良いかもしれない。それくらい、普通に真面目な作品。一応ミステリー仕立てにはなってはいるけど、特別そういった要素が必要だったとも思えなかった。

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医者と患者の関係性を深く描いていくだけでも、ちゃんとエンタメになると思う。正直、博物館関係の話はいらなかったんじゃないかなぁ。←こう思った人は結構いるらしい。

この小説を読めば、精神病患者に対しての偏見を持っていた人も考えが変わるかもしれないね。それにしても参考文献の量が半端じゃないです、執筆に七年かかったのも納得。


>追記。

後に、鬱病などで苦しんでいる人と知り合うなどして、あまりこういった精神病を扱った“エンタメ作品”はそれほど楽しめなくなってしまいました(当たり前の話ではあるけれど)

当事者を知っていれば感情移入もしやすくなっちゃうので、なかなか客観的に娯楽として捉えられなくってくるんだよね。知識の補完としては役立つとは思うものの、それだったら小説ではなく学術書的なものを読んだ方が正確なものを身に付けられるんじゃなかろうかと。

まあ、本書は少なくとも面白半分で読むような作品ではないのかもしれないなと、今となっては思ってしまうものだ(あくまでも個人的な感想であって他意はありませんので悪しからず)


とはいえ、こういった作品から初めてそういった病気のリアルを知るという人も少なくないだろうから、一般的に理解される(知覚される)ことを思えば意義あることなのかもしれない、こういった小説作品というものは。

楽しむ楽しめないとか度外視して、こういった病気が「ある」というのが当たり前に広まる方が大事だと思うので、エンタメとして敷居を下げてしまった方が正解なのでしょう、そんな気がしないでもないや。


しかしながら、装丁が超絶シンプルなので、あえてこれを手に取る人はいるのか? という疑念が無きにしも非ず。




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