★2009年2月2日の記事を再掲

音楽 (新潮文庫 (み-3-17))主人公・汐見医師の手記という形に本書はなっているんだけど、他の三島由紀夫作品に比べてかなり読みやすい印象。

一人称小説ということもあって、この精神分析医のプライドの高さなど、ものすごく人間臭さが存分に出ていて面白かった。ミステリー小説のようにも読めるね。

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まさに本書は医者と患者との戦いという感じ。汐見医師は相当な自信家らしく、手に負えない患者である麗子に対して、やりがいを感じるというよりは屈辱を感じていたりする。

また、患者が言った嘘を嘘だと看破したり、言いくるめるなどした時、「自分の患者がこうして打ちのめされている姿を見るのが、好きだという感情をどうしても否めない」と感じるなど、医師として相当歪んでいる気がする。


症例A (角川文庫)多島斗志之の「症例A」にも書かれていたんだけど、精神病を患っている人というのは、人(医師)の気を引こうとあらゆる手を尽くすらしいね

本書の患者・麗子もそのようなタイプみたいで、色んな計算により汐見を翻弄する。汐見も初めはそういうのを冷静に対処しているんだけど、段々と自分の方が麗子に執着していってしまって、ある意味立場が逆転しているというのが見所なのかも。


患者・麗子は診察を受ける病院の分析室を、自分の唯一の安息の場所だと思い込んでいる、という記述がある。これは医者と心と心を附き合わせる場所・行為ということもあり、考えようによってはこの場所・空間を“子宮”の代わりとするならば、医者と患者の関係が母親と胎児の関係を表してるのかも、とちょっと思った。考えすぎかもしれないけど。

こういった精神病などを題材にしたものって、深読みすればいくらでもできる感じなので、色々と考えさせてくれた。語り口も易しいので、初めて読む三島作品としては丁度良いかもね。








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