★2009年2月10日の記事を再掲

時間封鎖〈上〉 (創元SF文庫)僕はSFが苦手で、いつも設定を読んでいるうちに挫折してしまうことが多いんだけど、本書はそういうこともなくすごく読みやすかった。

小説内の世界は、現代の科学技術より極端に発展してるわけではないので、違和感なく読み進める事ができる。SFというより、ちょっとした社会派小説としても読めなくもないしね。SF初心者にはぴったりだし、秀逸なプロットなのでSF好きの方も納得の作品なんじゃないかなぁ。

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本書は一人称「ぼく」で、割と文章に比喩が多用されている。一人称なくせに、とらえどころのない主人公に感じた。冷静、悪く言えば冷めている感じ。これだけ聞くと村上春樹が書く主人公に似てる気もするけど、そんなに似てる気もしない。結構独特なイメージ。こういったタイプの方が、感情移入しやすいといえばしやすいのかもしれない。

こういった世界が破滅しそうな時代においては、大抵新興宗教のようなものが台頭してくるのが相場になっているよね。本書のニューキングダム(NK)なんかもそう。

この団体のエクスタシスという集会なんかは、真言密教の立川流を連想させるものがある。こういった男女交合の境地の思想ってどこにでもあるもんなんだね。こういった宗教に溺れる人と、主人公達の現実主義との対比も上手く描かれていて面白い。


本書の世界では、宇宙事業にEU、中国、ロシア、インドが参加しているみたいなんだけど、なぜか日本は参加していないっぽい。時折、世界の情勢のようなものも語られるんだけど、そこにも日本のことは一切語られていなかったりする。

なぜなんだ? 著者は日本のことが嫌いなのかな? と若干思ってしまった。というより、むしろ眼中にないのかも……。


時間についても面白い記述がある

時間にもいろいろあるのね。一ヵ月、そして一年と、人生の長さを計っていく時間。あるいは、ひとつの星が誕生し、山が高く盛りあがっていく特大の時間。かと思うと、心臓の鼓動より短いのに、たくさんのことが起こってしまう時間。こんな時間のすべてを同時に生きるなんて、ほんとたいへんだ。さまざまな時間があることさえ、簡単に忘れてしまう。


アインシュタインの夢 (ハヤカワepi文庫)時間封鎖された世界、地球消滅が迫っている世界においては、色んな時間の概念というものを考えざるを得ないんだろうね。今までは全くといっていいほど考える事はしてこなかったというのに。時間について考えたくなったら「アインシュタインの夢」を読むべし。

もうほとんど終わりに近いというところにきて、やっと彼らが逃亡している理由がわかる。でも、このような世界、地球にした原因である“仮定体”については、まだ謎を残したまま終わってしまう。


神は沈黙せず〈上〉 (角川文庫)本書のキーになる“仮定体”というものを考えると、世界は「神」と呼ばれる知性体のシミュレーションなのではないか? という風に始まる山本弘の「神は沈黙せず」なんかも思い出すね。

ラストもこれからまだ続きありそうな感じに終焉を迎えてしまって、なんかちょっぴり消化不良かなと思ったら、どうやら本書は三部作の第一部であるらしい。やっぱり風呂敷を広げるだけ広げたので、本書だけでは畳むことは出来なかったんだろう。うん、でもすごい続きが楽しみ。






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