★2009年2月24日の記事を再掲
久々に学園ものを読んだ。割とありがちな設定かな? とも思えるファンタジー。
勘の良い人なら「ぼく」の魂が生前犯した罪も早々に解っちゃうと思うし、感動シーンも割とありきたりなパターン。ではあるんだけど、それでもやっぱりグッとくるものがあった。良いお話です。
周りには自分のことを普通である思われたい。自分は変わっていると思われたくない。やりたいことは、めちゃめちゃ普通のこと。
だけど家族からも自分は非凡だと思われていて、多少なりとも期待されている。過剰なプレッシャー。この“普通”と“変わっている”ということって、一生ついてくる問題だよね。
社会を生きていく上で、普通であって周りから同類だと思われることは重要なことだろう。それが良い悪いは別にして、今の日本の社会はそうなんだからしょうがない。
それでもって、そうはあっても心の中では、自分は特別なんだという気持ちがあるはず。だけど本書の主人公は中学生。中学生くらいだと、周りから普通じゃないと烙印を押されてしまったら最後なんだろうなぁ…。
大人ではなく子供達自身によって、才能の芽をつぶすことにもなりかねないと考えると、ちょっと遣る瀬無いね。
本書の主人公は母親にこう言われる。
ほんの少しあなたに、何も持って生まれなかった人間の悲しみを知ってほしかった。何かを持って生まれた素晴らしさを感じてほしかった。
持てる者は、持たざる者については眼中にないのです。そういうものなのです。そりゃあ「あなたは恵まれてるんだよ?」と言いたい気持ちは僕にもあるけどね。持てる者、持たざる者については「街場の現代思想」に面白い考察が載ってます。
でもまあ本書は、一つの些細なきっかけさえあれば人は変われるんだ、家族は変われるんだということを教えてくれたような気がする。ここまで本音で語り合うことができる家庭がどれくらいあるだろうか。
やっぱり支えあっていかなくてはいけないと、それぞれが自分でその答えを導き出せたからこそ家族はまとまったのだろうね。エエ話や。「しぶとく生きろ」っていうのもほんと良いメッセージだし。中高生が本書を読むとバイブルになるかもね(但しライトノベルに毒されてない子限定)。
だけど、“ひろか”は救われないの? 全員救ってあげてくださいよ、森さん(とはいえ、すべてがハッピーに終わるなんてことは現実世界にもないことなので、これは仕方がないか)