★2009年3月6日の記事を再掲

希望の国のエクソダス (文春文庫)僕の記憶が確かなら2000年に本書が単行本で発売された時、著者の村上龍がNEWS23(ニュースステーションだったかな?)に出演していたと思う。

その時彼が語っていた言葉が僕の頭の中にこびり付いて、しばらく離れなかった。その言葉とは……

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この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない


……だった。結構な衝撃を受けたのを覚えている。しかもその当時僕は大学生で、これから就活を控えていただけになんともいえない気分になった。

それからずっと本書のことを気にはなっていたんだけど、なんとなく読まずにいて、あれから8年以上の歳月を経てからやっと今回読んだというわけ。


本書は「愛と幻想のファシズム」と同じように、国家破綻しそうな日本が舞台になっている。

労働者は、昇給はない→ボーナスカット→働くモチベーションを持てといういう方が無理→でも仕事しないわけにはいかない→ゆっくりと死んでいるような気分、というような状態にまで陥っている。もちろん失業者も多数溢れていて、僕らの現在の世の中を連想させるのに十分なキーワードが沢山登場。


そういった背景のもとに、中学生達は一斉に不登校をおこなう。それから彼らはグループを作って、学校を自分達の理想通りのものに変えようと行動を起こし始める、という風に話は展開していく。

この中学生のグループのリーダーである“ポンちゃん”は、不登校の問題などについてこう語っている。


・子どもはどこかで大人の社会に順応する訓練を受けなくてはならない。
・しかし、順応すべき大人の社会に規範となるモデルがないのが問題。


上記に加えて、政治家相手にこんなことも語っている。

まあ、子どもの場合ですが、とりあえず大人のやり方を真似るっていうか、参考にしていく以外に生き方を考えることはできないわけで、要するに、誰を真似すればいいのか、みたいなことがまったくわからなくなってしまっているわけです。政治家とかどうなんでしょう。いいからおれを真似て生きればいいんだ、みたいなことを言う政治家の人っているんですかね? どうですか? みなさん。


なかなか、グサリとくるね。政治家もそうだけど、僕ら大人は子供達の鏡として真っ当な生き方をしてるんだろうか…。そもそも真っ当な生き方の意義も定かではないしね…いやはや。


それでそういった思いから、彼らは自分達で技術訓練センターを創設しようと画策する。それには当然お金が必要なわけだけど、彼らはインターネットを使いどんどんとネットワークを広げていって、ネットビジネス(ニュース配信サービス、番組制作、出張ビデオ撮影etc.)まで始めてしまう。

ほんとにこんなことが中学生ができるの?と、結構非現実的な感じに思えるんだけど、圧倒的な情報量でもって読み手を納得させるだけの筆力が本書にはあるんだよね。でもちょっと全体的に説明的だというのは否めないけど。


それから彼らは「より良い信用、新しい信用を自分たちで創ってしまえば、通貨を偽造してもそれは犯罪ではない。それが新しい通貨に取って代わる」という風なことまで言っていたりする。

正直、この発想は無かったなぁ。さすがに中学生ともなると、発想が柔軟だね。と思ったけど、これは村上龍の発想だったか……。


本書を読んで、以前ネットで読んだ「ニートの19歳女性が、セカンドライフ(3D仮想世界)で月13万円稼いでいる」という話を思い出してしまった。当然この方も、自分が生きるために、存在価値を見出すためにネットについての勉強もしたことだろうと思う。

本書では教育論についても村上さんは主張したかったんだと思うけど、本当の教育・勉強というのは必要に駆られてやるのがほんとなのだろうなぁと考えさせられた。

義務教育のように与えられたものをただやるだけだと、そりゃあ欲望も希薄になっちゃうよね。そもそもそういう思いで勉強する生徒なんて皆無だろう。“希望がない”なんて気付くのだって、現代の学生にしたら奇跡かもしれない。


あと、経済についても気になった記述があった。


・人材の国外流出がこれからの最大の問題。
・人材が残っていれば日本経済はいつか立て直せる。
・日本に残っていてほしい人材ほど海外でも仕事ができる。
・人材の国外流出が本格的に始まってしまったら、たぶんこの国の繁栄の歴史が本当に終わるだろう。



えっと……大丈夫なんですか? 今の日本。






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