★2009年4月3日の記事を再掲

少女七竈と七人の可愛そうな大人 (角川文庫)本書は連作短編で、話により一人称視点が変わるという体裁になっている。犬の視点などがあって面白い。でもなにより主人公・七竃の語り口が特徴的で、良いキャラしてました。

真面目で控え目だった母・川村優奈が、別の人間に変わりたいと願い「どうしても、ふしだらな人間にならなくてはいけない」と考える。それから辻斬りのごとく男遊びをはじめて、それでできた子供が七竃だった。というところから物語りは始まる。

【スポンサードリンク】


主人公・七竃は大変美しい顔に生まれたわけだけど、どうにもそれが生きていく上で足枷のように感じている。

美しいということはけして誉めたたえられるばかりのことではなく、むしろせまくるしい共同体の中ではそれは、ある種の、禍々しい異形の証なのだった


美しいというだけで周りからチヤホヤされて、良いことばかりなんじゃないかと大概思いがちだけど、実際はそうじゃないんだろうね。特に日本の社会なんかは周りとちょっと違うってだけで、いじめの対象になりかねないし。

僕みたいな普通の人間には美しい人の苦悩を追体験することってどうしたってできないから、なんとももどかしい気分だわ。


美しい人は、都会に向いている、と、そんな気がね。つまり変わっている生きものは。頭がよすぎるもの、悪すぎるもの。慧眼すぎるもの、愚かすぎるもの。性質が異質で共同体には向かない生まれのものは、ぜんぶ、ぜんぶ、都会にまぎれてしまえばいい、と思っていてね。ははは。


やはり“出る杭は打たれる”前にまぎれてしまって、自分の精神を保護する必要があるのかもなぁ。心も体も保護色になって生きないといけないのかもしれない。心がか細い人間は。


七竃の場合、それを鉄道模型の世界に求めていた。そう七竃は今で言う“鉄子”らしい。そこに自分だけの世界を構築していたというわけ。田舎の狭苦しいコミュニティよりも、さらに狭い世界に入り浸っている。その世界に七竃意外に入っていけるのは、幼馴染の雪風だけだった。


この雪風と七竃の関係。お互い好き同士のような感じなんだけど、非常にドライに描かれている。必要以上のことは喋らない。本書を読み進めていくと、二人がどういった関係なのかが自ずと解ってくるので、余計に切なく感じてくるんだよ、これが。

成長するとともに、お互いの顔がちょっとずつ似てきたことにほんと恐怖したことだろうね。二人の気持ちが繋がっているだけに。


本書は特別大事件が起こることもなく、たんたんと物語は進んでいく。良く言うと読みやすかった。多少物足りなく感じるのは否めないんだけど、登場人物が語る言葉の端々に考えさせられるものが結構あって、なかなか深かったように感じる。






Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

« »

Post Navigation