★2009年5月18日の記事を再掲

奪取(上) (講談社文庫)本書の主人公はある信念を持っている。

世間が信じきっているハイテク機器やそのシステムが、どれほどもろく危なっかしいものなのか。そのほころびをつき、盲点を探り出す。システムに取り込まれ、飼い慣らされてしまった世間の連中の鼻をあかし、目を開かせてやる。


こういった信念を根底に置きつつ、目標達成のために偽札作りを開始した。

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試行錯誤の繰り返しで、そこから色々な発見をしながら徐々に技術を上げていくところなど、何かの研究者や博士のようにも不思議と見えてくる。

始めは偽テレホンカードなどを作っていたような落ちこぼれの主人公が様々な経験を積んでいき、仲間達と協力してさらに高みを目指すという物語。本書はそのような成長小説のようにも読めてしまう。


印刷の話がメインということもあり、結構専門的な事柄が多く出てくるんだけど、それでも物語性も結構高い。キャラクターもしっかり作りこまれていて、特に“じじい”の登場で加速度的に面白くなるね。なんか中盤辺りまで完全に主人公を食っちゃってるんですが。勝手に悟空と亀仙人みたいな感じに読み進めてしまった

僕は以前広告のデザインスタジオに働いていたということもあって、印刷技術のところなど結構懐かしく読ませてもらった。dpiとかスクリーン線数なども勉強した記憶があるし。印刷業界の人にはもちろん、商業デザイナーの人にも本書はおすすめかもしれない。


それにしても、偽札作りってほんと果てしなく大変だということがよく解った。技術がいるというのはもちろんのこと、材料費が半端じゃなく掛かってしまう。印刷機本体はもちろんのこと、それに必要なインク、紙、フィルム、現像液などなど。特に紙なんかはお札用に木から育てなくちゃいけないだなんて気が遠くなっちゃうよ…。最低でも4、5年は掛かるみたいで、実際の犯罪者も木から育ててるのかなぁ? ちょっと気になった。

あと、本書は偽札作りだけでなく、ヤクザとの鼻の明かしあいなどもあって、頭脳戦としても楽しめます。1000ページ近くあるんだけど、全然飽きさせずエンタメとしては最高の出来なんじゃないかと。最後のオチはちょっと気に食わなかったけどね。


これを読んで偽札作りをマネする人が出てくるんじゃないか? と危惧する人も中にはいるかもしれないけれど、僕は逆にやめておこうと考え直す人の方が多いんじゃないかと思う。“絶対に割に合わない”←こういう結論に必ず達すると思うよ。本書が抑止力になったら良いのにね。






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