★2009年5月21日の記事を再掲

柔らかな頬〈上〉 (文春文庫)本書は、行方不明児童の親の気持ちが生々しく描かれている。子供だけでなく、何かを見失ってしまっている状態。現実と折り合うことができずに、戸惑いをみせざるを得ない心情など。

親は心の奥底で、子供はもう死んでいるのではないかと思いつつも、納得のいく答えが欲しいからこそ何年経とうが追い続ける。根拠の無い誹謗中傷を浴びようとも、事件に決着がつかない限りそれに常に縛られて生きていかなくてはならない。

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拉致問題の家族などもこのような感じなんだろうなぁと、考えさせられるものがある。だけど、ニュースを見ているだけの僕らも、ある側面では一緒なんだよね。

ニュースを見て、同情すべきか怒るべきか、どう反応していいのか解らないからこそその事件を気に掛け続ける。それから続報を待つ。自分の中で収まりが悪いというだけで追い続けるわけだ。心情のベクトルは全く違うけど、構図としては非常に似ている。不謹慎ではあるけどね…。


本書の中で行方不明児童の親は、元警察官で末期癌にかかり死が近づいている人物に対し、親近感を覚えるなどして自分自身に似ていると感じたりしている。もうすぐ死んでしまう自分に折り合いがつけられずにいる人間。

終わりがすぐそこにあるからこそその人物を愛しく感じるという主人公に、多少不謹慎さを感じるのだけど、読んでいくうちに二人の関係は一言では言い表せないほどの深くて濃いものであると感じる事ができた。


本書はミステリーなんだろうけど、本当の意味での解決はされない。その代わり、複数回答が用意されている。その中から読者が自分で選べば良いということなんだろうね。なかなかこういったタイプのミステリーって無いので消化不良に感じる人もいると思うけど、個人的には悪くなかった。







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