★2009年6月17日の記事を再掲

個人的な体験 (新潮文庫 お 9-10)本書の内容は、上に引用した裏表紙に書かれてある説明に全て集約されあるといっても過言ではない。わが子が「脳ヘルニア」を起こして生まれてきて、手術をしても植物状態になるであろうと医者に宣告された父親の心の葛藤が描かれている。

植物的存在の重荷、赤ん坊の怪物の重荷を免れたいと願い続ける父親。正常な子供に育つ見込みが希薄ならば、いっそ死んでほしいと考えて、医者に手を貸してもらい赤ん坊を衰弱死させようと画策する。

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常に赤ん坊がもう衰弱死したんじゃないかと、そういうことしか喋らないし考えられないような状態に陥っていく父親。寝ても赤ん坊の夢を見るという苦悩。がんじがらめに縛られ、酒と女に溺れていってしまう…。


確か著者の大江健三郎自身も障害を持ったお子さんがいるという話を聞いたことがあったので、もしかしてご自身の経験から本書が書かれたのかな? と思ったら、やはりご自身の経験に触発されて本書が書かれたらしい(あとがきに書かれてある)

ただ、本書主人公・鳥(バード)とご自身を同一視して書いたわけではないとのこと。完全に切り離して設定されているんだそうな。


それにしても、これが自分の身に起きたとしたらどうするかと考えると、正直判断がつかない。やはり障害を持った子供、ましてや植物状態の子供だとしたら重荷であると感じざるを得ないのが本音。親の自分が年を取り亡くなってしまった後のことを考えると、この子はどうなっちゃうんだ? ということまで考えてしまい、それならいっそ……という考えに僕は至ってしまう。

植物状態である子供を受け入れるとしても、なんの感情表現もしない、表情すら変えない子供を一年中見ていないといけないという絶望を抱え込まないといけないのは相当辛いことだろうね。。

植物状態からもしかしたら回復するんじゃないか? という希望だけが心の支えなのかもしれない、父親側からしたら。母親側はまた違った感情を持って子供と接するのだろう、母と子というのは特別な関係なのだから。


本書の終わり方に賛否両論があったみたいだけど、個人的にはあれで良かったんじゃないかと思う。同じ立場にたたされた人間が読んだとしたら、良い励みになると思うし、大江さん自身もあれを書くことである種の決意表明に繋がったのだと想像します。

デリケートな問題なので、非常に感想というものを書きにくかったなぁ。でも読んでよかった。こういった問題って、文章で書かれてこそ伝わるものだと思うし、映像作品では表現しにくい濃い心理描写は小説ならではだと思う。






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