★2009年7月9日の記事を再掲

『罪と罰』ノート (平凡社新書 458)本書は、小説「罪と罰」を満たしている無数のディテールの深層へと読者を導き、ドストエフスキーの内面と想像力の奥深くに分け入るための道しるべとして書かれたもの、とのこと。

著者の亀山郁夫氏は、翻訳や研究をしているということもあって、相当な深読みぐあいになっている。

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「罪と罰」のおおよそのあらすじは以下の通り。

俗に「ナポレオン主義」という選民思想にかぶれ、二人の女性を殺したエリート青年が、一人の心優しい娼婦との触れあいをとおして罪の意識に目覚める


一文で表すとこんな感じになる。本書では各部ごとの丁寧なあらすじも載っているので、小説の内容をちょっと忘れちゃったという人にも安心です。もしかしたら、読んだことない人でもそれを読めば付いて行けるかも。いや、でも無理かな…。


謎とき『罪と罰』 (新潮選書)これまで「罪と罰」の解釈本として沢山の人に読まれてきたのは「謎とき『罪と罰』」だと思うけど、そこに書かれた江川卓氏の見解なんかも本書では引き合いに出されて色んな解釈が試みられている。

興味深かったのは、ラスコーリニコフの老女殺害現場になぜリザヴェータが現れたのか?という問い。それに対する答えに、ラスコーリニコフのセンナヤ広場での“聞き間違え”があったというのだ。この亀山氏オリジナルの解釈に、正直これは目から鱗だった。ロシア語の発音から導き出したものらしいけど、よく見付けた出したなぁと感心してしまう。


あと、ラスコーリニコフが住んでいた屋根裏部屋に関してもなかなか面白い。屋根裏部屋というのは、建物の頂点にありながら悲惨と同居する空間だとして、それがナポレオン主義にかぶれた彼の精神性のメタファーであるとも解釈している。ちょっと強引な感じもしなくもないけど、ぴったりハマってる気がするね。


ちなみに、このラスコーリニコフの自論である「ナポレオン思想」を、一文で要約するとこうなる。

非凡人は、ある種の障碍を踏み越える権利をもつ、ただし、その踏み越えが人類にとって必要となる場合に限る


この思想が出てくる本があるらしく、それはナポレオン三世の「ジュリアス・シーザー伝」とのこと。そのナポレオン三世が影響を受けた本が、トーマス・カーライルの「フランス革命史」だったらしい。


それから、江川氏も考察していた数字や名前の起源なんかも亀山氏独自の解釈で語られてます。個人的に一番え?!って思ったのが、黄の鑑札から関連してソーニャの最初のお客は誰だったのか? というところ。まるで人身御供みたいで、彼女の自己犠牲愛に胸を打たれてしまう…。


こうやって解釈本の類を読んでみると、改めてドストエフスキーの巧妙さというか、綿密にプロットを構築して書いてたんだなぁと感じさせてくれます。しかも口述執筆してたというんだから、さらに驚いてしまう。

ほんとに彼は天才であると声を大にして言ってしまいたい気分。私生活は酷いものだったけど、それがあったからこそいくらでも深読みのできる濃い作品を創作できたんだろうなぁ。またそのうち「罪と罰」を読み返してみよう。今度は亀山版で。







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