★2009年7月30日の記事を再掲

宗教なんかこわくない! (ちくま文庫)本書はオウム真理教事件から端を発して、そもそも「宗教とは何なのか?」という疑問などから様々な問題を提起している。

この「宗教とは何なのか?」だけど、まず普通に生きている日本人だと考えないような問題だと思う。その反面、とんでもない事件がもし起きた場合に、それを起こした当事者が宗教と関連していたとするとなぜか納得してしまう人も多いんじゃないだろうか。

それはなぜか? たぶん多くの人が宗教を“得体の知れないもの”だと思っているからだろう。もちろん僕もその内の一人に含まれるんだけどね。

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その原因の一つとして著者は、「日本人は宗教を触れたくないようなタブーにしてしまっているから」と言っている。かつて国家神道という支配的かつ一切の宗教の上に君臨する強大な宗教が日本にあったから、今でもこういった扱いになっているとのこと。確かに、そういった影響もあるのだろうなと、少し納得。裏には天皇制というものも見え隠れしてそうだね。

天皇制なんかは特に本書で語られてたりはしないんだけど、まあいわゆる個人崇拝というものがかなりの影響を与えていたのは間違いないところだろう。この個人崇拝は、“内面に対して語りかけてくる”ものであって、当然崇拝する特定の物や人物があるわけだ。


“内面に対して語りかけてくる”ものこそを、近代の日本人は“宗教”だと錯覚していたらしい。僕らだって、他人に何かしら“踏み込んだ語り方”なんかされたりすると、「なんか宗教みたいだ」なんて思ってしまう。今で言えば、選挙の街頭演説なんかもしかり。


著者は個人崇拝のことを、

崇拝する側の人間に、“自分の頭でものを考える”ということを禁じるものである。なぜならば、自分の頭でものを考え始めたら、「なんであんなオヤジを崇めなきゃならないんだ?」ということになってしまう。


と言っている。言い得て妙だね、これは。崇拝するものさえいたら、その考えに従っていればいいのだからそんな楽なものはない。自分の頭で考えなくてすむ。←概してこういう考え方をする人が多いのが日本人だと思うんだけど、ファシズム的な状態を嫌うのも日本人なんだよね。やはりそういったものを“得体の知れないもの”だと感じちゃうのが性なのです。


それから著者は「日本人は宗教を“哲学”の一項目として扱い、それで宗教を“難解なものだ”と言っている」として、距離を置いているんじゃないかとも指摘している。

う~ん、みんな宗教を哲学のようなものだと思ってるのかな? 著者は「宗教はイデオロギー」だとも言っているんだけど、こちらは僕も同意できる。やはり思想信条なんだと思うんだよね。宗教というものは、赤の他人の思想信条を押し付けられちゃうんじゃないか? みたいな危惧を多くの人が持ってて、それで怖く感じてるんじゃないかと。


また、宗教というものは、“宗教外の力”(国家が認めるか認めないか)によって、“宗教的価値”を高められたり低められたりするんだそうだけど、これは国家によってより難解なものに据え置かれちゃってると言っているようなもんだね。

まあ、ようするに今も昔も宗教は、国家によって畏怖・畏敬の念を付与されてきたということなんだろう。そういう意味では、国民は振り回されちゃっているということか?


あと、本書で面白かったのは、「オウム真理教の信者は現実の麻原彰晃を本当に必要としてるのだろうか?」という項目。結論から言えば、必要としてない。信者たちは修行さえできれば、解脱さえできれば良いのだそうだ。

なんでかといえば、自分の中に、胸の中に尊師がいるかららしい。これは別に何か割り切って考えているというよりは、自分の中の理想的なものが大きくなりすぎちゃっているという状態なのかな?


この“自分の中の麻原彰晃”というようなものは、まだ自分の頭でものを考えることが出来ない人間のする“思想の人格化”だと著者は言う。それから宗教というものは、思想を思想として抽出することが出来ない人間がした“思想の人格化”から始まるとも言っている。つまり、“人格化された思想”の最たるものが“神”だというわけらしい。

これはなかなか面白い考察だ。確かに人格化した方が、自分がこれまで吸収してきた思想信条を表に具現化しやすいのかもしれない。かつ、もしそれを他者に広めようと考えた時にも伝えやすいのだろうね。

まあこれは、キリスト教伝来以前の日本における仏教では、たぶん起こらなかった現象のような気がする。個人崇拝という考え方がない限りなかなか難しいのでは?


うん、なんというか本書は途中いろいろ脱線したり、めちゃくちゃな論評になってたりする部分もあったりしたけど、なかなか面白かったと思います。ただ、割と平易な言葉で書かれているにもかかわらず、なんか読みにくく感じたんだけど…。たぶん、あまり僕と相性が良くない文体だったのかもなぁ。でもまあ、それなりに楽しめました。

それにしても、なんで表紙はあんなイラストが使われてるんだろう? 内容と繋がってるとは到底思えないんだが…。







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