★2009年7月31日の記事を再掲

蠅の王〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)本書はいわゆる少年漂流モノ。無人島に子供たちだけが取り残されてサバイバル生活を送るという、ある種王道的な物語。上の説明に「野性にめざめた彼らは殺りくをくり返す…」なんて書かれているけど、そんな殺りくみたいなことは起こりません。

確かに人が死んだりするけど、そんなカオス状態みたいなことにはなってないのであしからず。僕自身もバトルロワイヤルみたいなものを読む前に想像してたんだけど、割とリアリティのある話でした。

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やはり序盤は子供達だけということもあって、皆現状を楽しむかのように泳いだり果物を採って食べたりして、遭難したという恐怖感など吹っ飛んでしまっているかのように無邪気な姿を見せている。

大人のいない世界において段々と仲間意識も目覚め、子供だけの団体生活を満喫する彼ら。自分達で選挙をしリーダーを決め、まさに彼らだけの王国が出来上がっていた。


だけど、当然人が沢山集まるところには感情の摩擦が起きるもの。規則を作ってもそれを守らないものが沢山出てくる。そこに亀裂が生まれるのは必然だったわけだ。

さらにそこへもってきて、夜に幽霊や獣が出るという疑心暗鬼も生じるなどし、子供達の緊張がピークに達することとなる。そこから悲劇への階段を登ることに…。


本書を読んでて、子供というのはものすごくデリケートな人間なんだなとすこぶる感じられた。彼らは、自分の気持ちを正確に表に発することがなかなか出来ずらいものだと思うし、その反面で感情を抑制するのも難しいんじゃないかと思う。

そういったものにかなりもどかしく感じていることだろう。要するに、気持ちを抑え溜め込んで溜め込んで、それがある時ふと切れてしまった時の壮絶さというものは本当に計り知れない。


なおかつ、それをやってしまうとどうなってしまうかという想像力も大人より劣っているので、そういった意味では非常に恐ろしさを感じた。この想像力の欠如こそが本書の悲劇を生んでしまったというわけなんだろうね。

子供は天使の顔をしながらも、内に狂気を抱えている。←こういったフレーズってたまに聞くよね。


本書のタイトル「蝿の王」とは、聖書に出てくる“ベルゼブブ”のことらしいんだけど、このベルゼブブ、旧約聖書では神として扱われ新約聖書では悪魔として扱われているとのこと。なんという皮肉なことか……このタイトルは本書に出てくる子供達のことを指しているんじゃないのか? そう思えてしょうがない。

ベルゼブブ – Wikipedia

ラストは、なんだか微妙だね。あれはあれで悪くはないとは思うけど、なんか一気にこれまでの緊張感から解放されて、読者もろとも無理矢理現実に引き戻されちゃったという感じがする。何とも言えない気分にされちゃいました。まあでも、結構面白かったと思う。

内容的にそこまで怖いってこともないので、ホラーの類が苦手の方も気になったら読んでみたら良いかも。







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