★2009年8月26日の記事を再掲

密やかな結晶 (講談社文庫)何とも言えない雰囲気が漂っている小説。切なくて、ちょっぴり怖さもあり、だけど悲壮感というものは不思議と感じない。読み終わったあと、異様な余韻があります。すごい作品であることは確か、好き嫌いはあると思うけど。

“記憶狩り”“秘密警察”とくるとジョージ・オーウェルの「1984年」を想起させられちゃうんだけど、舞台である島がどういったところにあるのか解らないし、警察はあっても国の存在がまったく見えてこないので、本書はある種ファンタジー小説のようにも読めてくる。

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そもそもこの島が世界の全てなのか? それすらも解らない。解らないことだらけの世界観にいきなり放り込まれちゃうので、読者は初めはとまどうことだろうね。でも物語は割りと坦々と進んでいくので、理解のスピードはちゃんと追いついていけるのであしからず。


本書の主人公は小説家ということもあって作中小説というものも出てくるんだけど、その内容は島の現実や自身の影響をすごく受けて描かれている。後半になってくるにつれ、どんどん作中小説と現実と重なり出すところが何より恐ろしさを感じた。

どちらの世界でも、あらゆるものを失くしていくということに、只々耐えるだけしかできないのだ。ほんとにどうしようもない。


皆「島全体が無くなってしまわないのか?」と、それを恐れているのだけど、何もできない。対抗する術がない。だから、耐えるだけ。それだけが全て。だからものすごく切ないものがある。

次第に島が無くなってしまうよりも、もっと大変なものを失くすことになってしまうんだけど、それが何かはネタバレになるので言わないけれど、最終的にはそれが彼らにとって救いになったんじゃないかと、そう思えるしそうであって欲しいと願うね。


正直、本書を読んだら頭の中がフワフワとしてきて、どういう風に感想を書いていいのやら解らなかったというのが本音です。最初にも書いたけど、ほんと異様な余韻がある。良いか悪いかもよく解らない、そんな小説だった。

ちなみに本書に出てくるR氏のRって、「Remember」のRなんだろうね。








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