クロスファイア」(宮部みゆき
★2009年10月19日の記事を再掲

久々に宮部作品を読んだんだけど、やっぱり上手いねこの方は。上手いというよりは丁寧と言った方が個人的にばっちりハマる。ちょっとしたエピソードなんかもよく練られてるし、人物描写も秀逸。否が応にも作品に深みが出るってもんです。

本書は少年犯罪が大きな軸になっている。世の中には、「面白くないから何か刺激的なことがしたい」という倦怠と憤懣から犯罪者になるケースが少なくない。

贅沢な悩みではあるんだけど、そういった未来に向けての潜在的な加害者がいるという現実がある。それはえてして未成年者な場合が多かったりするわけだ。そこには当然のごとく少年法が絡んでくる。

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彼らは罪をほんとに償ったの? と、いぶかしく思ってしまうほど平然と社会に復帰しているケースが多々あるらしい。そこに不満を持つのは被害者とその家族だけではなく、報道を見聞きしている僕らも皆同じように不満を感じるものだ。


主人公の淳子もその一人。ただ彼女の場合はあまりにも正義感が強すぎたわけだが…。

彼女は念力放火能力(パイキネシス)という超能力を持っていた。その能力を使って、社会生活を謳歌している元犯罪者などに制裁を加えている。常人にはない能力を有益な方向に使うために、野獣を狩るという建前で。彼女にとってはいつしかそれが義務のようになっていた。


Death Note, Vol. 1 (Death Note (Graphic Novels))制裁を加えたい願望。歪んだ正義感。非常に恐ろしい、ある意味狂気だね。もし絶対的な能力を持っていたとしたら、そういう気分になっちゃうもんなんだろうか? 超能力なんて世の中で信じてる人は少ないだろう、そんな中でそういうものを持っていたら完全犯罪なんてし放題だ。言ってしまえば神にでもなったような気分なのかもしれない。ちょっぴり漫画「デスノート」を思い出してしまった。

ただ、彼女の場合は、そういった能力を持っていたが故の孤独感からの願望だったとも言えると思う。一般の人に危害を加えないために、あえて孤独な人生を送ってきた彼女。孤独だからこそ、世間の役に立ちたいという思いから制裁者になったのだろうと僕は考える。

自警の念というか私刑の念を持っている人も多いことだろう。そういう人達の思いを偶像化したものが自分なのだと、自分自身に言い聞かせていたんじゃないかと想像する。


淳子という女性。なんてかわいそうな人なんだろう。望んで危険な能力を持って生まれたわけでも、望んで殺人者になったわけでもないというのにね。後半、ガーディアンという彼女の思いと同じくする組織に加入して、少し幸せを味わうことができたけども、それが余計にラストを切なくさせる結果に…。

本書を恋愛小説のように読むという人がいるみたいだけど、それってほんとに切なすぎませんか? 辛過ぎるよ、まったく。なんか溜息が出ちゃうね。


それにしても、ガーディアンという組織や警察との繋がりとかも、もうちょっと突っ込んで描いて欲しかったなぁ。そこが悔やまれるところ。ガーディアン達メインの小説も読んでみたい気がするね、書いて欲しいな。


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宮部 みゆき
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伏線の入れ方に著者のセンスが表れる「レベル7(セブン) 」(宮部みゆき)







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