★2009年10月23日の記事を再掲
評判が良いということは聞いていたけど、うん、まあ普通に面白かった。叙述トリックにも見事にだまされちゃたし。やられた感は確かにある、ただそこまでインパクトは強くなかったかなぁという感じ。
というか、そもそもこの叙述トリック、小説作法的に有りなんですか? まあ面白ければ有りなんだろうけど、初めてこういうパターンのものを読んだので「ちょっとセコい」と思ってしまった(笑) でも著者のミステリ好きな感じは伝わってきたので許せるけども。
ま、この叙述トリックもさることながら、本書では「探偵役」が警察を含めて3人も出てくるというのが非常に変則的に思えなくもない。この時点で読者を混乱させることに成功してるんだもんなぁ。キャラの性格なども相まって、只々展開が進むのに身を任せるように読み進める他なかったわけで。
キャラといえば、まあ特筆すべきは「ハサミ男」自身なんだけど、ここまで動機のない犯人って今まで色々読んできて今回初めてなんですが……。なぜ殺すかは考えたこともなく、どうやって殺すかしか考えない人物。
賢そうな女の子をターゲットにして殺害し、自身も自殺願望がある。そこに何か因果関係があるのかと思いきや、どうもそうではないらしい。
ハサミ男はこんな発言もしている。
わたしの内側は、からっぽだ。
そして、わたしの外側も、からっぽだった。
ふたつの異なるからっぽがある。その境目がわたしだった。
一体どういう意味に取ったらいいのかが解らない。その境目というのは、どの部分を指すものなのか? 非常に気になるものだ。内側と外側と境目という風に、実は3つ人格があるというわけではないだろうし。
シリアル・キラーやサイコパスであろうとも、大抵は家庭環境であったりトラウマであったり、潜在的に何かしら動機となり得るものがあったりするものの、このハサミ男に限っては本当に全くなさそう。
まあ動機なんてものは、我々一般人がその犯罪についてただ納得いく答えを知りたいがためのものでしかないわけだし、それが明かされなくても誰が困るということもないのかもしれない。犯人が捕まった時に、それが量刑に多少影響を及ぼすくらいのものなのだろうね。
ただ、そこが語られなかった場合、それが小説であったならばモヤモヤ感がものすごく残ってしまう。頼むからスッキリさせてくれよ!! と感じてしまうのも致し方ないです。確か同じメフィスト賞作家の森博嗣の小説(Gシリーズ)もこんな感じだったなぁ。
それにしても、本書を読むとミートパイが食べたくなってしまうね、これも仕様か。あと、本書は映画にもなってるらしい。よく映像化できたなぁ、そこは素直に驚きです。