★2009年11月11日の記事を再掲

慟哭 (創元推理文庫)何の前情報も入れずに読み始めたんだけど、個人的には結構楽しめました。Amazonの評価を見ると賛否両論という感じみたいだね。事件が解決してないからどうのこうの言ってる人が沢山いるみたいだけど、僕はあの終わり方は好きだけどなぁ。なんとも言えない余韻を残してくれます。

本書は宗教を題材に持ってきているので、またオウム真理教ネタかな? なんて思ったんだけど、本書が書かれたのが93年らしいのでそれ以前ということらしい。松本という主人公が出てくるから、てっきりそうなのかなと思っちゃったんだけど、違うみたいです。

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なんというか、この主人公が宗教にハマっていく様というのは、まさに実際にもこんな感じなんだろうね。心の隙間を埋めたい。求めている何かを見つけたい。人間の幸せってなんだろう? という問いや願望がまとわりついてくるからこそ、“悪質な”宗教にひっかかってしまうわけだ。


ある登場人物が宗教についてこんなことを言っている。

 一番問題なのは、宗教団体の金儲けが、法律で認められていることだ。宗教法人が税の特別優遇措置を受けられるのは知ってるな。会費や寄付金は無税だ。それだけじゃなく、事業税すら一般企業に比べて大幅に低い。一般企業に課せられる税率が三十七・五パーセントなのに対し、宗教法人は二十七パーセントだ。同じ仕事をしていてもだぜ。
 その仕事の内容も笑わせる。現行の法律で許されている宗教法人が営むことのできる収益事業は三十三種だ。これをすべて列挙してもいいんだが、お前は覚えきれんだろう。そのうちで笑えるものだけ挙げてやる。例えば浴場業だ。風呂屋をやるのと宗教と、どう関係があるのかおれは未だにわからない。旅館業もそうだ。それから料理飲食業、遊戯業、遊覧所業、貸席業。これだけ聞いてると、何の商売だかわからないだろう。まるで観光業だ。それから理容業、美容業も許されている。興行業、技芸教授業なんてのもある。不動産販売業、不動産貸付業、倉庫業、駐車場業も可能だ。不動産屋も真っ青だ。
 極めつけが金銭貸付業だ。なんと宗教は金貸しもできるんだぜ。これはかなり旨味のある商売だ。なにせ元手の資金は簡単に調達できる。信者から掻き集めればいいからな。集めた金に税金はかからない。そっくりそのまま貸付金に回すことができるんだ。付け加えるなら、無条件に貸付業を営めるわけではない。一応、許可制ということになってる。だがこれも、申請さえすればまず許される。だからなんの意味もないんだ。
 要は、宗教団体はなんでもありということなんだ。金儲けのありとあらゆる手段が法律で許されている。あちこちで宗教団体が作られるわけもわかるだろう。なにせ宗教は、最も割のいいビジネスなんだからな


こうやって見てみると宗教団体って、国から「どうぞ金儲けしてくだい!」って言われてるようなもんだね…。だから宗教団体からしてみると、人をだましているというよりはビジネステクニックとして相手をからめ取るという感じなのかもしれない。だってビジネスと変わりないんだもん。

もちろんちゃんとした真面目な宗教団体もあるのだろうけど、上記のような話がもっと周知の事実になるように広まれば良いなと思うよ。そうすればひっかかる人も減るのに。でも、マスコミとかも宗教団体に牛耳られてる場合もあるだろうから無理かもしれませんが…。


それから、宗教的な儀式とか魔術とかに関連した殺人って、割と小説などでは扱われるガジェットだと思うんだけど、リアルでは実際に事件として起きたことがあるんだろうか? その辺がちょっと気になってしまった。

ニュースでそういうのって聞いたことないんだよなぁ、なんか公園に儀式用の道具が放置されていたとかいう話なら聞いたことがあるんだけど。日本ではやっぱりそういうのって無いのかな。創作上だけの話なのかも。


あと、警察内の確執というものも本書を面白くしてくれた一つの要因だろうね。マスコミとの駆け引きもさることながら、警察内の面子を保つために裏を取ってない情報をマスコミにリークしてみたり…(国民に先入観を与えてしまって、目撃情報が激減するらしい) それで取り返しのつかないことが起きてしまい、内輪もめに発展してしまうという悪循環。こんなことをやってたら、実際にも犯人の捕り逃しも結構やってそうだなぁ。

この警察内の確執は、キャリア・ノンキャリアといったような階級制度からも来てるみたいで、本書を読んでると宗教における階梯とも意図的にダブらせて語っているようなところが目を引きました。たぶんその辺からも、主要なトリックを解くためのヒントにしたかったのかもしれないね。そんな気がする。


本書にも、いわゆる“どんでん返し”するトリックがあるわけだけど、宗教の話と警察の話の二つの時間軸はどうなってるのかなと気にしてたら中盤で解っちゃいました。でも、解ったからといって白けることもなく、十分楽しく読み進めることができたけどね。

ほんとこれがデビュー作なのか? と思わざるを得ない文章力というか筆力でした。著者の他の作品も読んでみなくては。







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