★2009年11月23日の記事を再掲

最後のユニコーン (ハヤカワ文庫 FT 11)何がどう良いとかはっきりと言葉では言えないんだけど、なんか良かったです。不思議と読ます力がある作品。とにかくユニコーンというキャラに魅力があるね。絶対的な存在であるという意識が働くから、ユニコーンの存在や行動だけでなく文体自体からもオーラを感じる。

本書は、“最後のユニコーン”が仲間たちを探しに、森を出て人間が住む世界を旅をするという物語。人間たちもすでにユニコーンという存在を忘れてしまっている中、自分という存在は真実の姿なのか? 自分自身が自分のことを思っているとおりに、周りからも見られているのか? など、ユニコーンの葛藤が色濃く描かれている。

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それは、真物か偽物か。実在か幻か。魔法かトリックか。読者も一緒になって、この相対する感覚を意識しながら、読み進めていくことになるわけだ。


話が進むと、ユニコーンはこの真物と偽物が同時に自分の中にある状態に陥られる。まさに自分という牢獄の中に縛れてしまうという状態。こんな状態になった場合、自分ならどうするか? そういった問いも本書の中にあるのだろう。彼らにとっては究極の選択となる。

ユニコーンの場合、それを片方だけ選ぶわけだけど(神聖なる動物なので当然です)、僕らなら間違いなく両方選ぶのだろうな。だって、相反するものを同時に持つことができるのが人間という生き物だもの。矛盾した事柄をひとつどころに留めておくことができるのは、人間だけでしょう。なかなか感慨深いものがあるね。


だけど、ユニコーンたちには“歌”がある。究極の選択をして片方だけを選んだ後にも、彼らにはあらゆる感情表現をすることのできる歌があるのだ。

本書ではとにかく歌が出てくる。本書には素晴らしい歌がある。それにより彼らはあらゆるものから解放され、慰められているのだろう。作品全体からにじみ出てくる詩的な雰囲気は、ここからも帯びてきているのかも。


魔法使いにクリーチャー、呪いの城など、ある種王道ファンタジーで、特別すごい展開が待っているわけじゃないのに、何か惹きつけられるものがこの作品にはある。良作です。





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