わたしを離さないで カズオ・イシグロ
★2010年2月6日の記事を再掲

とにかく評判の良い作品で以前から読もうと思ってたんだけど、この度ようやく手に取ってみた。うん何というか、はっきり言ってなぜそこまで皆に賞賛されているのかがよく分からなかったなぁ。

正直、この作品は万人受けする内容ではないよね。それにもかかわらず、この作品を悪く言う声がほとんど無いっていうのはなぜなんだろう?

解説にもあるけど、この作品は細部にまで抑制が効いていて非常に淡々と穏やかに物語が進んでいく。ちょっとづつ真実が小出しにされていき、最後にその全貌が明らかになる頃には、読者にとってその真実はある意味予定調和でしかない。衝撃であるはずの真実は、ある意味読者との再確認でしかなかった。

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非常に丁寧に描写されていて読者に優しい文章なんだけど、優しすぎて衝撃度がかなり薄い。色々と考えさせられるテーマなのは間違いないんだけど、僕みたいに衝撃で体を打ち抜いて欲しいと願う人間にはちょっと退屈に感じてしまうね。

もしかしたら、「ですます調」が合わないのかなとも思ったけど、そういうことでもないんだろうな。


(以下、本書を読んでないと意味が通じないかも)


それにしても、すべて偽善で渦巻いているこの世界。キャシーたちにとっては辛かっただろうと思う。薄々気付いてはいたみたいだけど、好奇心の方が勝ったということか…。そんなことなら、早く提供者になって使命を果たした方がいくらか幸せだよな、と僕ならそう思う。

提供者の人達がどういう思いでいたかは分からないけど、人の為になっているんだと感じていたのならそのままでいて欲しかった。ヘールシャムでの良い思い出を胸にしてね。


あと、気になる文章が1つあった。

四度目の提供がすめば、技術的にはそれで使命が終わります。でも、ほんとうにそうか、とトミーは言っていたのです。何らかの形で意識が残るのではないか。そして、向こう側でも相変わらず提供がつづくのではないか。それも何度も何度も……。向こうには回復センターもなく、介護人もおらず、友達もいない。最終的に誰かがスイッチを切ってくれるまで、続行される提供をただ見ている以外にすることがない……。


「向こう側」とか「スイッチ」ってなんなんだろう? 「向こう側」を普通に「あの世の世界」であると仮定したら、まあ話は通じるんだけど、実際に何かあると考えるとしたら、なんかすっごい深くて濃い話になっていくなぁ…。


本書は、僕にとって普通の作品にしかなりえなかったけど、何か少し心を引きずるものがあるのは確かだと思う。気になった方は一読あれ。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
カズオ・イシグロ
早川書房
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