★2010年3月31日の記事を再掲

ハーモニー〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)「虐殺器官」が面白かったので、文庫化まで待てないってことで本書を手に取ってみた。

うん、期待を裏切らない面白さはあったように思う。特にこの世界観というか設定がすごいね。物語内で「調和(ハーモニー)という名の蟻地獄」と書かれてたりもするんだけど、まさに“究極の監視社会”がここに描かれている。

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これはジョージ・オーウェルもびっくりなんじゃないかと思わざるを得ないほどの世界観。体の中から管理されているために、体型からして皆同じだという空恐ろしさ。皆同じだからこそ誰も傷つかないし、価値観も共有することができる。


「ハーモニー」という言葉は非常に耳に心地よい言葉だけど、そこにある思想は社会主義・共産主義に近いものだったりするんだと、なんか改めて示してもらえた感じがした。調和が取れていたら、そこに無条件の安定と平和が待っているのか? いや、そうじゃない。やはりそこには沢山の犠牲をはらんでいるというわけだ。

ただ、そういう社会にずっと身を沈めてしまった人間は、そこに犠牲があるということに気づかない、意識しないというだけの話。まるで牢獄のような世界であるはずなのに、ユートピアであるという錯覚に生きている。そこが非常に怖いところだよね…。


本書では、こんな平和な世界にとある「宣言」が行われて、人々が疑心暗鬼に陥り世界が混沌と化す情景が描かれることになっていく。ここからぐぐっと物語が動いていくわけなんだけど……。

なんというか、大局的に見て世界観の説明が多いんですよ、これがね。特殊な世界観だからしょうがないのは分かるんだけど、ほとんどそればかりなのであまりドキドキ感というものも無く坦々と進みすぎるきらいがある。

でも、世界観の面白さがそれらを補って余りある感じなので、まあ普通に面白いんだけど。でも、ちょっと勿体無い気はしちゃうよね。ラストも予想がついちゃったし、「虐殺器官」の時のようにもうちょっと意表をついてもらいたかったなぁ。







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