子どもたちは夜と遊ぶ
★2010年4月19日の記事を再掲

なんとも重く切ない物語だった。直接的な描写がないところでも、怖さや物悲しさ、危うさが、物語全体に漂っている感じが付きまとう。そういったものが諸々読後にもかなり引きずってしまうね。まさにこれこそが物語の持っている力なんだなぁと、改めて思い知らされてしまった。

本書では、非常にリアルな人間関係が描かれている。皆が皆拒絶されることを恐れて、踏み込んだ関係を築くことができない者ばかり。対する相手によって自分を演じ分けるにも関わらず、相手に執着心を強く抱く。

心のすれ違いばかりなのに、そうとは気付かず他人を巻き込んでいってしまうという悲劇。

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「たまらんぜ、深月。なにが悲しくて、こんな小説を書く」と思わず北方謙三ばりの言葉を発してしまうほど(←花村萬月に対して言った言葉)、すごく痛くて心に突き刺さるエピソードがテンコ盛りでした。いや、ほんとに読後はため息ばかりでるよ。


モチーフや設定(犯人の行う劇場型犯罪など)なんかは、過去の色んな作品のつぎはぎのようにも感じなくもないんだけど、本書の真骨頂はやはり心理描写にあるんだと思う。

男女の主人公は双方ブラザーコンプレックスを持っていて、その辺の葛藤、不安、恐怖の連鎖こそが読みどころ。それぞれが持っている美学(立ち振る舞いやプライドなど)が変化していく様を、注視して読むべし。


それから、過去と現在の話の繋げ方なんかも結構上手かった気がする。頻繁に過去話を入れる作家さんなんかは、割と現在の話とテレコで挿入することが多いんだけど、本書はそんな単純じゃないんだよね。

ちゃんとそれが計算されて挿入されているらしく、自然に現在の話と繋がる感じだったので素直にスゴイと思ってしまった。正直、最近文庫化された「スロウハイツの神様」はそれほど文章は上手くないと感じたんだけど、デビュー2作目の本書に関しては割と上手いんじゃないかと思う。




それにしても、秋山教授という脇役がいるんだけど、このキャラの人間性がなんだかんだで一番興味深かった。人生を達観しているような(物言いをする)人物。自分の好きな人の幸せを望み、そのためなら何でもするというスタンス。彼が男子学生に何てささやいたのか、ものすごく気になってしょうがない。


子どもたちは夜と遊ぶ (上) (講談社文庫)
辻村 深月
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