★2010年4月22日の記事を再掲

現代思想2010年4月臨時増刊号 総特集=ドストエフスキーいやぁ~なかなか面白い内容だった。大江健三郎監修のやつやユリイカでの特集とかと比べても、内容的には充実していたように感じる。

その最たるものはというと、古今東西の有名作家達などによるドストエフスキーについて言及した文章が、多数収録(引用)されている点なんじゃないかと。作家毎にドストエフスキーの好き嫌いがはっきりしているようで、その辺も興味深かった。「え、この人までドストエフスキーについて語ってたの?」と思うような人もいたりして、データベースとしても結構貴重かもしれない。

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評論やエッセーに関しても、それなりに有名どころが文章を寄せているね。内容的には、五大長編に関するものをどれかに偏ることなくまんべんなく揃っているという感じなのかな。文芸評論家の豊崎由美の文章も載っているんだけど、どうにも彼女だけ毛色が違ってました。カラ兄のフョードルのことを「純正印のキモメン」とか言ってみたり、かなりぶっ飛んでるしw

それから、亀山郁夫とドストエフスキーやトルストイ作品の翻訳者による対談などもあったりで、その辺もファンは必読かもしれない。


そんな対談の中で、村上春樹について言及があったので引用してみる。

沼野充善 春樹におけるドストエフスキーの影響はあまり誇大に見ないほうがいいと思っています。村上春樹に実質的に影響を与えているのは、彼が原文で読みもすれば、翻訳もしているアメリカ文学の方だというのは、言うまでもありません。ただ、彼はカフカとかドストエフスキーといった文学上のちょっと高級に思われそうな名前をいわば「ブランド名」的にうまく自分の作品の中にとりこむことにかけて、天才的な才能があるんですね。『海辺のカフカ』という小説のタイトルだってそうで、カフカとか『カラマーゾフの兄弟』とか、普通であればポップ・カルチャーの中には登場しにくいものをうまく取り込んで、それを魅力的に響かせてしまう。『海辺のカフカ』が現れる前に、誰がそんなタイトルの小説が可能だと思ったでしょうか。しかし、いくらタイトルがそうであっても、またそのおかげでプラハ市の主催する「フランツ・カフカ賞」を彼が受賞したからといって、村上春樹に対するカフカの影響がさほど本質的なものとは思えない。ドストエフスキーについても僕は似たような感想を持っているのです。


“「ブランド名」的に作品の中にとりこむ”というのは、彼の真骨頂だよね。ドストエフスキーから多少なりの影響はあるんだろうけど、大江健三郎、埴谷雄高ほどの影響は確かに見られない。いわゆるハルキチルドレンと言われている作家達も、村上春樹からどこに影響を受けているかと言えば、この“「ブランド名」的に作品の中にとりこむ”というとろが多いいのだろうな。


『悪霊』神になりたかった男 (理想の教室)また、本書には小説「悪霊」の中に出てくる『スタヴローギンの告白』の亀山訳も収録されている。彼の著作「『悪霊』神になりたかった男」の中でも、この『スタヴローギンの告白』の翻訳はなされているんだけど、どうやら本書のものは新訳みたいだね。

比較してみると、ところどころ微妙に言い回しが違うのが確認できた。まあ、元々バージョン違いのある手記なので、もしかしたらその辺の違いなのかもしれないけれど。目下、新訳「悪霊」の翻訳作業が進行中(「小説宝石」に連載中)みたいなので、書籍化されるのが楽しみではある。


それにしても、リクーシン「乞食の日」の完全版を読んでみたいなぁ。カラ兄のフョードル殺害はアリョーシャだったとしてカラ兄の行間を埋めて創作したという小説がネット上にあるらしい(ロシア語) 本書ではその概要が載っているんだけど、非常に興味深いんだよな。書籍化されないのかなぁ、まあ、ないだろうな…。







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