チョコレートコスモス 恩田陸
★2011年8月8日の記事を再掲

やっぱり自分の知らない世界を垣間見るっていうのは、なんて面白いことなんだろう。そう改めて感じさせてくれた作品。

本書では舞台を演じる役者、戯曲を書く劇作家、それら演劇人たちの生態が非常に興味深く描かれている。演劇人視点から観た演劇や共演者同士の駆け引き、小さな劇団の旗揚げまでの流れなど、舞台の上だけでなくそこに上がるまでにもやっぱりドラマがあるわけだ

それらは言うまでもなくネガティブ要素が満載。確執、仲違い、精神的肉体的苦痛、その他諸々。

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そういったものを乗り越えたからこそ良い芝居ができるわけだし、やりとげた感も相当なものなのだろうと想像に難くない。モチベーションになるものって人により違うのだろうけど、役柄から自分自身へとリセットした瞬間って感慨深いものなのだろうなぁ。


それから、公演シーンにも結構惹きつけられました。何が起こるかがまったく分からない妙な緊張感、そういったものが上手く描けていたように思う。

戯曲という創作物、その中に登場する虚構の人物が、創作された虚構の物語を、舞台にて皆がそれを虚構だと分かった上で演じているという構造。展開にまったく予想がつかない、そこが面白い。


あと、オーディションのシーン、ここでは2人の「天才」が登場してくる。その登場人物って、冒頭から読者には天才だと刷り込まれていたから、ここで神懸った演技をするのは分かり切っていた事なのに、それでもワクワク感を覚えずにはいられなかったところが素晴らしかった。その発想はなかったわという天才2人の共演も良かったなぁ。


本書の登場人物がこんなことを言っている。

「子供が噴水浴びしています。凄くはしゃいでいて、楽しそう。あの子はこの瞬間、世界に触れたことに興奮してるんでしょうね。冷たい水の気持ちよさや、光が当たって水がきらきらしていることだけが今のあの子の世界の全てで、近くで見守っているお母さんのことも、他の子供のことも、なんにも気付いていない。遠くでこうやってあたしがあの子を見ていて、あの子のことを話していることも知らない。今は噴水とあの子だけが世界の全てなんじゃないかって」


天才ってこういうことなんだろうなと、しみじみ感じてしまう(その感性が素晴らしいの一言)



チョコレートコスモス (角川文庫)
恩田 陸
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