不滅 ミラン・クンデラ
★2011年12月7日の記事を再掲

何というか、皆アクの強い登場人物ばかりで、本書を読んでいてほんと圧倒されたとしか言いようがない。

特に主人公のアニェス。結構変わった視点、色んな角度から物事を捉え考える特異な女性だよね。他の登場人物は割と感情的に物事を考えるんだけど、彼女の場合、とにかく様々なものに対して疑問を感じざる得ない性格のようだった。

相当賢い人物なのは言うまでもない。だからこそ、自分を律して『不滅』というものを意識して生きていたのだろう。

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本書で言うところの『不滅』とは、「人々の記憶に留まる」という感じの意味となっている。賢い人だと、周りから自分がどう振舞えば(どういう仕草をすれば)どう思われるかなんて、分かりすぎるほど分かってしまうので、そこに生き辛さというものを感じるのだろうなぁ。その辺の重苦しさはものすごいものがある。


『不滅』なんてものは、自分の思い通りにならないことばかりで、ほとんどが周りにレッテルを貼られたものが一人歩きしてしまう。精神的な監視社会。著名人ならばなおのことだ。本書では、そんな著名人である文豪ゲーテの物語なんかも描かれている。

ゲーテもさることながら、著者であるクンデラも出てくるし、それらと対比されるかのように創作された人物が登場。それぞれの物語が絶妙に絡まり合い、交じり合い方がほんとにスゴかった。現実と虚構の混じり方があまりにも自然なので、創作された人物もまるでほんとに生命を持っているかのごとくリアルに感じられるんだよね。




自分の“我”を押し通したいという女性ばかりだというのも特に印象的だったなぁ。『不滅』のために自分を律するというばかりじゃなく、自分というものを見せ付けたい周りを振り回してでも人の意識に留まりたいという人物もいたりで、これもなかなか興味深かった。

他人の視線というやっかいな重荷から開放されているからこその振る舞いなのだろうね。周りの人間に自分を受け入れてもらいたい。そのためにはなりふり構っていられない。「あたしはここにいるのよ」という自己主張の権化。正直、こういう生き方の方が楽なのは確かな気がする、本人が自然にそういう行動をしているのであれば。


それにしても色々複雑だった。一読しただけでは深く理解できないね。本書の登場人物もこんなことを言っている。

そのとてつもない完璧さは、われわれを越えている、われわれの記憶の容量を、われわれの集中力の容量を越えているので、その結果、この上なく熱狂的に注意深い聴衆ですら、この交響曲から聞きとれるのは、そこに含まれているものの百分の一の部分、それもマーラーの考えるところでは、もっとも重要でない百分の一にすぎない、ということになるんですね!


音楽に対して言っているんだけど、これは小説に対しても言えることだよね。そのうちまた再読したいと思う。



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