仮想儀礼
★2012年4月18日の記事を再掲

失業者2人がテレビで9.11を体験し「これからは虚業の時代だ!」と実感したことから宗教を営むに至る、というのが本書の内容。

新興宗教の成り立ち、その始まりはネットからというのがなかなか興味深い。なおかつ、悪徳なことをするわけじゃなく、常識に基づいたアドバイス、生活指導、社会システムの知識を与えるなど、一儲けをたくらむものの良心は失いたくないというところが割と好感が持てるね。

ビジネスだと一応割り切っているものの、何かにすがりたいと思う人、何かしらの道を示してもらいたい人、生きづらく行き場所のない人など、そういった人達&あまりお金にならない人達を無下に扱うこともできず、教団を運営するにも神経をすり減らしながら活動することにもなり、その辺の葛藤も読み応えがあった。

【スポンサードリンク】


また、教祖である主人公が元都庁の役人で、なかなか頭がキレるということもあり、周りの人間が甘い汁を吸おうとやってきたのかそうじゃないのか、その辺の分別がある程度つくというところもストーリーを面白くしてる感じではあるね。ピンチ→解決→カタルシス、このパターンが繰り返されるので小気味良い。


本書は、色んな背景を持った人間の苦悩、それに伴った人間模様が細かく描かれているので、それなりに読者の心に重たくのしかかってくる。上下巻で1200ページ程度だからそこまで長い話だというわけじゃないんだけど、色々考えさせられてしまうので思いのほか読み終わるのに時間がかかったような気がする。

こういう内容のものを読んでいると必ず「なんで宗教なんかにすがっちゃうの? うさんくさいじゃん」とかついついアレルギー反応を示してしまいがちなんだけど、やっぱり藁にもすがりたいという気持ちになる人はほんと世の中に沢山いるんだよな。そんな風に今回改めて感じてしまう。


それに、物事を自分で決めるのではなく誰かに決めてもらうことが、どれほど楽なことか。特に精神が不安定な人はそういう考えに陥りがちだというのも、僕自身の知り合いにもそんな人がいたりするので、なんとも言えない気持ちで本書を読んだのでありました。

それにしても、終盤の嫌がらせはこっちまで胃が痛くなる感じだったなぁ。政治家を敵に回すとあそこまでされてしまうのか、恐ろし過ぎる…。




仮想儀礼(上) (新潮文庫)
篠田 節子
新潮社
売り上げランキング: 236,693








LINEで送る
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

« »

Post Navigation