ヘヴン 川上未映子
★2012年5月30日の記事を再掲

今回は、一人称「僕(14歳)」ということもあって、川上さん特有の文体は捨て去られている。一読してこれまでとはずいぶん趣が違うものだねと感じたけれど、登場人物の考え方等はすごく川上さん的でした(彼女のエッセイ本を読んだすぐ後にこちらを読んだのでよく分かる)

それにしても、いじめを扱っている作品というだけで、なんかもう色々考えさせられるものがあるね。

いじめられてる側の「いじめに従っているのではなく、受け入れているのだ」という主張とか、「痛みや苦しみに耐えることこそが大事で、そこに意味がある」という考え方など、この子とは住んでいるステージが違うわぁとしか思いようがなかったなぁ。

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いじめる側に屈しないことへの美徳というか何というか、そのことで自分の方がワンランク上の存在だとでも言っているかのような主張。気持ちは分からないでもないけれど、逃げてもいいんだよ? 我慢しなくていいんだよ? と、言ってあげたい衝動にかられてしまう。

「乗り越えた先にヘヴンが待っている」、そういう思いに縛られて頑なになって、人生において大事な時期を潰して良いものなのかと思わざる得なくて非常に切ない。


いじめる側の論理として、「正しい正しくない良い悪い関係なく、したいからする」というものがある。完全なる結論有りきの主張。自分の都合にしたがって世界を解釈しているわけだ。

本書においては、いじめられる側の人間もまた自分の都合にしたがって世界を解釈している。いや、解釈しているというよりも、自分の作り出した世界観の中で生きていると言った方が近いのかもしれない。そういった人間にどう手を差し伸べてあげればいいものなのか、ほんとに力になってあげられるものなのか。


ヘヴンに到達した先に今の価値観をぶっ壊すほどのものが待っているのかもしれない。そう願いたい。




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