★2012年9月15日の記事を再掲
最近『空海の風景』という本を読んだ影響から、確か京極堂シリーズでも密教について書いたものがあったなぁと思い本書を何年かぶりかで再読してみた。
その扱われている密教というのが「真言立川流」なんだけど、左道化した密教、生殖崇拝やその儀式等からカルト的に見えなくもない(実際そう思われているかどうかまでは知りませんが)
そういったカルト的な儀式も本書では描かれていて、その光景というものが初読時に自分の頭の中で強烈に記憶として残っていた。そのため、物語全体でその儀式等が語られるものだとばかり思っていたんだけど、どうやら“解決編”にて詳しく語られるだけだった模様。
しかも、370ページほど読み進めてようやく「真言宗」というワードが出てきて、500ページほど読み進めてやっとのことで密教寺院が登場してくるという塩梅(しかし、この時点ではそれが密教の寺院とは分からないようになっている)
そして、800ページ近く読み進めて「空海」というワードが出てきたという感じであった。
なんだか、割と終わりくらいにならないと宗教チックにはならないみたいですな。個人的には少し思っていたのとは違ったものの、まあ普通に謎が謎を呼ぶミステリー、なおかつ叙述トリックということで結構面白かったから特段問題はなかったように思う。
それにしても、この「真言立川流」、性的な儀式があるとはいえ『これほどしっかりと女性を認めている宗教は無い。男女揃わぬ限り悟りには至りえない』と本書では言及されており、そういう解釈もあるのかと、そういう風に聞くと非常に意義深いんだなと、そう思えてならないね。
男女が慈しみあい、生命を絶え間なく生み出していく、血統を保つことが本義とのこと。儀式等は非常にカルト臭いものの、やはり論だけじゃなく“宗教”として練られたものなのだと、なかなか感慨深いものだ。
▼構成力は素晴らしいが思想的な部分は薄い「魍魎の匣」(京極夏彦)