★2013年4月27日の記事を再掲

天人五衰―豊饒の海・第四巻 (新潮文庫)自分は選ばれた者、自分はこの世に半身しか属していない、自分に無意識などなく自分の機構は全て統御されている、自分の身辺に起こることには何一つ偶然はない、どんな悪をも犯すことの出来る自分の無垢を確信。

そんな今で言うところの中二病をこじらせたかのような人間が本書の主人公・安永透。『春の雪』『奔馬』で登場した清顕と勲の上位互換という感じで、なかなか興味深い人物でもある。

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彼がこの一連の物語で語られてきた転生者として扱われていくわけだけど、非常に自意識過剰でなおかつ計算高く、案内役である本多との“頭脳戦”が展開されているようにも思えて、本書はこれまでで一番エンタメぽく読めたかもしれない。


それにしても、自分のこと人生のこと世界のことを分かりきるほど分かっている(と思っている)人間というのは、一体何を楽しみに生きるものなのだろう? 賢すぎてあらゆるものの本質が分かってしまい絶望し、その結果自死を選んだ某編集者さんのケースを知っているので、その辺のことをどうしても考えてしまうものだ。

自分を変えたい、その究極のところが自死なんだろうけど、本書の主人公の場合、自分を変えられないなら世界を変えてしまおうという考えの人物だったりするので、世界=他人を傷つけるということを選んだということなんだろうなぁ。

世界=他人と認識している人っていうのは、ほんと孤独なのだろうなと想像に難くない。世界も自分の一部だと考えている人と比べても、どれほど生きづらいことやら。内にこもることによって余計に世界を敵視することだろうし、自尊心も大きくなる他ないとしか言いようがない。


しかし、そんな彼の大き過ぎる自尊心を打ち砕く人物の登場により、彼の人生も一変してしまう。これにより輪廻の環が断ち切られたのか、はたまた元から贋物だったのかは定かではないものの、非常にスカッとするシーンでありました。

ある意味でこの主人公・安永透こそが、著者である三島由紀夫なのかもなと思わなくもないね。彼の周りにも自尊心を打ち砕くほどお説教してくれる人がいたならば、あんな最後を迎えなかった可能性だってあったかもしれない。







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