★2013年10月23日の記事を再掲

愛のゆくえ (ハヤカワepi文庫)ブローティガン作品の中ではかなり読みやすい部類なのかもしれない。デビュー作の「ビッグ・サーの南軍将軍」と同じくリアリズム小説っぽくあるので、入り込みやすいような気がする。

ただ、原題を知ってしまうとなかなか手に取りづらい感じなんじゃなかろうか。だって、「The Abortion(妊娠中絶)」なんだもんなぁ。僕自身もそれを先に知っていたら本書を手に取ってはいなかったかも。

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しかしまあ、そんなタイトルとは裏腹に若干ほのぼのとしており、割と坦々と物語が進んでいくのでちょっと拍子抜けしてしまう。中絶というある種の劇的なガジェットがあろうとも、物語上の温度は一定に保たれているという印象。それも怖いくらいに。

おまけに、主人公の変わった職業であるとか、ヒロインの特異な精神性というものもかなり興味深い感じにも関わらず、これらの設定が物語的にはどうでもよいことになっているところが、何とも勿体無いというかスゴイというかよく分かりません。


やっぱり個人的には、ブローティガン作品ならば幻想的なものの方が好きだなぁなんてことを思いつつ本書の解説を読んだんだけど、そこに以下のようなことが書かれてあった。

ブローティガンの世界は徹底してアンチ・ドラマティック、アンチ・ヒロイックである。


なるほど、そういうことなのか。なんだかようやく合点がいった感じがしないこともないや。そういう作風にあえてやっているのだとしたら、そういった部分に妙味というものがあるのだろうね。


なんだか、その“アンチ・ドラマティック”であるとかを予め知ってて読むのとそうじゃないのとでは、ずいぶんと読書体験自体が違ってくると思うんですが。ここへ来てやっと彼の作品の楽しみ方が分かってきたような気がする。

いつか読み返す時があったら、意識しつつ読書せねば。







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