★2014年1月14日の記事を再掲
本書は「両性具有(アンドロギュヌス)」がテーマとなっており、なんだか妙な気持ち悪さとドロっとした生臭さがありますな。そういったものが絡み付いて離れないという読書感、悪くないかもしれない。
発生する事件自体も、前作・前々作と比べてかなり猟奇的になっていることだし、逆にそれがヨーロッパという舞台に変な言い方だけど似合っている気がするから不思議なものだ。
その犯人が毒されている思想というのも結構突飛な感じで、「病的なナルシシズムとフェティシズムがサディズムに転化」したものらしく、なかなか常人には理解しにくいもので大変でした。
まあ、いわゆるサイコパスの類になるのだろうなぁ。
でも、これら犯人の狂気の論理というのは割り切れば理解できるところではあるんだけど、今回もやはり犯人以外に黒幕的人物が存在しており、それがとにかく意外だったとしか言いようがない。
いやぁ~、この黒幕。分かった人っているんだろうか? まあ、確かに亡命ポーランド人であるとは言及されていたけれど、それを伏線だと考えて全ての事件と結びつけて考えるとか、なかなかそういう風にパズルのピースをはめ込むのって難しいと思うんですが……。
なおかつ、結構後から出て来たキャラだったと思うし、なんだかミステリのセオリーとは懸け離れている気がしないこともないや(とはいえ、セオリーなんて分かっていないし、そんなこと考えながら読んでいないけれど)
しかしまあ、主人公・カケルと文学者との論戦の部分はなかなか興味深かった。「過剰エネルギーの人為的な放出」からなる一連の議論。結構難しく咀嚼しにくかったものの、元ネタであるバタイユの著書も読んでみたくなってしまった。ま、本書の議論をそれなりに理解した後でバタイユに挑戦してみたい。
それにしても、今回の“解説”も異様に濃いですな、結構読み飛ばしちゃったけども。
薔薇の女―ベランジュ家殺人事件
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