奇子 手塚治虫
★2014年4月26日の記事を再掲

4年くらい前、NHKで手塚治虫の特集をした時に本書の存在を知り、これは読んでみたいとちょっと思っていたんだけど、そのまま忘れていて今更ながらに手に取ってみた。

う~む、読了後何とも言えない余韻の残る、そんな作品だったように思う。その感想をどう言葉に表したらいいのやらよく分からない、そんな感覚。

日本の旧家の陰湿な関係、とにかくそこの部分に衝撃を受けざるを得なかった。

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まさに家が呪われているかのよう。財産のため、家名のため、面子のために人命が犠牲になる様は、戦後の闇なども相まって読んでいて気持ちの悪さが募るものだ。

舞台が片田舎ということもあって、余計に閉鎖的な環境が築かれてしまっているから、周りの人間が互いに庇い合えば何だって隠蔽出来てしまうという、そういった怖さというものも感じてしまう。


ほんとドロドロとした“ゴミ溜め”な社会。そういった中で唯一の良心であった人物ですら次第にダークサイドに堕ちていく……、いや、むしろ自らがその社会に無理矢理適応させていくところにもショックを受けるほかなかった。

自分の生きている世界に正義などないと悟ることほど絶望的な事はないでしょう。ゴミ溜めはゴミ溜めらしく生きていく。それこそが処世術だなんて認めたくはなかった、ほんとに。


そんな世界の中で光となり得た、そう思われていたのが純真無垢な“奇子”という存在なのだろうけど、蔵や箱に閉じこもった“人間不信の権化”とも言える人間に何を求めるというのだろう?

そういった人間に育ててしまった張本人達から求められたところで、今更何も与えられるわけがない。とりわけ人を好きになるということを曲がった形で履き違えている人間から、与えられる物なんて何も有りはしないだろうにね。


結局、社会的規範といったものを教えるべき対象は、奇子ではなく閉鎖的なコミュニティにあったと、そう思えてならないや。




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