★2013年4月1日の記事を再掲

先日放送されたものを録画していたので観てみた。ゲストは『博士の愛した数式』で有名な小川洋子。ちなみに、僕自身は彼女の作品は1冊も読んだことがなかったり。

でも、いわゆる創作作法的な部分には興味があって、その辺も語ってくれることを期待しつつ番組を観たわけなんだけど、割と色々と作家さんの頭の中身が垣間見れた感じでなかなか面白かった。

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個人的には阿川さんの創作作法なんかも知りたかったものの、さすがに番組MCがそういった自分語りを長々と話せるはずもなく、そういう場面は一切ありませんでした、残念。

てなことで、興味深かった部分を以下に書き起こしてみました。聞き取りにくかった部分は適当なのであしからず。



★小説家は観察者

阿川 前お会いした時にもお話を伺って、私ほんとそれを支えというか心掛けようと、出来てないんだけどね。まず「1行たりとも無駄な言葉を書いてはいけない」ということをおっしゃったのと、それから「観察者として小説家でいたい」と。だから、例えば「顕微鏡を覗いている人間が自分しかいない」っておっしゃいましたよね?

小川 あの~、ですから小説を書いてる時の気分、感覚っていうのは顕微鏡を覗いているのに近いんですよね。私が取り上げる素材っていうのは、ほんと身近にある小さな世界を書いているんですけれど、その顕微鏡のガラスの向こうには宇宙があるみたいな。しかも、それを観察してるのは自分だけだから、自分がこれを書かないとこれは無かったことになってしまう。

阿川 誰も気付かない。

小川 ええ、だから書かなくちゃいけないんだっていう風に自分を元気づけて。

阿川 周りで何が見える? 洋子ちゃん何が見える?って期待して待ってるわけですよねぇ。

小川 そういう人達に今こうなってますこうなってますってことをお知らせして、で、自分が手出しできないんですよね。自分がなんか余計な物をそこに加えたり、自分がなんかピンセットで触っちゃったりすると、せっかく物語自体が自由に動こうとしてるのを邪魔してしまうんで、手出ししないでじっと観察者に徹する。そこを我慢できるかどうかですかね。

阿川 え、でもやっぱり実際に小説・物語を作り上げているのは作者ですよね。そうすると作っていくことになるじゃないですか。

小川 あの~、それで自分がそれを書いたんだ、1から100まで全部自分が作ったんだっていう気持ちになった時は失敗作ですね。ふふふふ(笑)

阿川 へぇ~。

小川 自分じゃない人が書いたみたいだっていう感触が残っている時が作家として私は一番幸福を感じます。

阿川 誰かが書かせたように脳ミソが動いて、手先が動いて、言葉になっていく。

小川 そうですね。でも言葉を選ぶのは自分なので、上手くいかないんですよね。


なるほど、物語を練るわけじゃなく、自然と頭の中に浮かんでくる映像をそのまま言葉に置き換えているという感覚か。以前、確か他の作家さんも同じようなことを語っていた記憶がある、森博嗣だったっけ。



★心を描写するのは難しい

小川 ま、小説ですからね、人間を描くわけですけれど、人間の心を描くってとっても難しいわけですよねぇ。寂しいとか悲しいとか書いちゃうとそれで終わりになっちゃうので、じゃあ何を書くかっていうと、例えば、じゃあその人の寝室の棚に何が並んでいるのかとか、お茶を飲む時どんな模様のコーヒーカップを使うかとか、そういう外側しか書けないんですよね。

阿川 そうかぁ。

小川 心っていう柔らかいものは書けないので、何か輪郭のあるものしか言葉は表現出来ないんじゃないかって気がするんですよね。

阿川 そこで、その部屋に住んでいる人間がどういう心持ちでウッキウッキワックワックしている人なのか、とっても長年寂しく思っている人なのかっていうことを表現する?

小川 ええ。

阿川 彼は長年寂しく思っていたとは絶対書かない?

小川 そうなんですよね、これが難しいんですよね。寂しいっていうことを書くのに寂しいって言葉は使えないっていう、あの~そういう人間の心っていうあやふやなものを扱う、しかし言葉ってかっちりした辞書に載ってるようなものを使って書く、ものすごい矛盾したことをやってるんですね、小説家はね。


この辺の話はあまり納得出来なかったというか共感できなかったなぁ。「輪郭のあるものしか言葉は表現出来ない」っていうことはないでしょう。映像などでは表現できないことまでも表現できるのが小説の強みなんだと思います。



★芥川賞選考の傾向

阿川 これは私自身だけが感じているかもしれないんですけども、すごく刺激的なものばかりを選ぶ傾向があったり、あるいは書いている作者の履歴が大変特異な人を選ぶ傾向があったり、そういう流れというか。

小川 いえ、それはね、実は全然選考の場では話題にならないですよね。作品のことしか見てないですからね、みんな。

阿川 みんな?

小川 ええ、そんな世の中の傾向とか、ましてやその人の経歴とか、もう極端な話男性か女性かも忘れてると思いますね。

阿川 そこまでですか?

小川 ええ、選考し終わってみて雑談しながら「あ~、黒田夏子さんて私の母親と同じ歳だわ」っていう感じですね。

阿川 そうだったんですか?

小川 ええ、そうですねぇ。

阿川 あらまあ、へぇ~。


小川さんが芥川賞選考委員ということでこういう話題が出たんだけど、阿川さんの質問は本好きな人の多くが思っていることなんじゃなかろうか。それをズバッと聞いてくれるとはほんと素晴らしい。

しかし、小川さんの答えは「作品のことしか見てない」とのことで、ほんとかなぁ?と思えてならないね。候補作が発表された時点でメディアがこぞって最年少だとか最年長だとか色々と報道しているし絶対気になるでしょうに。


そんなこんなで、なかなか興味深い対談でありました。小川さんの「ええ、ええ」という相づちの声が大きくて非常に自己主張しており、「あぁ、今時のおばちゃんぽいな」と思えてちょっと好感が持てたり持てなかったり色々でした。

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