★2009年9月25日の記事を再掲

録画してたやつをやっと観た。なんというか、ものすごく濃かったというのが観終わった感想。

やはりあれだけクオリティの高い作品を生み出していくには、相当な苦労があるんだなぁ。疲れをかなり蓄積させてるのも観てて分かったし、それでも手は抜かない信念が井上さんの中にはある。素晴らしいとしか言いようがないよね。

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なぜ彼はそこまで頑張れるのか? それは彼の漫画に対するスタンスの中にも少し垣間見ることができた。

手に負えないことをやる。

自分でコントロールしてどうこうっていう風に書いたとたんに、こざかしいものになるのは目に見えてるじゃないですか。漫画家であり続けるために、漫画を描くみたいなことって全くやる気がない。


常に何かに挑戦するという姿勢を持ち続けるということなんだろうね。では何のために挑戦しているのだろう? いわゆる表現者でありたいと思ってやっていることなのだろうか? いや、ただ漫画が好きだからということなのかも。もっと言えば、自分の描く絵が好きだから、今より先の自分が見たいのかもしれない。

番組では、井上さんが漫画を描いているシーンも放送していた。筆で描いてるっていうのは知ってたんだけど、まさか人物の目とか細かいところまで筆で書いてるとは思わなかったなぁ。線で陰影を付けてる部分まで筆だなんて凄すぎです。さすがに背景までは筆じゃなかったみたいだけど、相当手慣れてる感じではあったね。

展覧会用に大きな絵を描くシーンもあって、そこでも大きい筆を使って普通に描いてたし。まさに「弘法筆を選ばず」だった。原稿を描く時と感覚が変わらないってことはないと思うんだけど、普通に音楽を聴きながらサラサラっと描いていたのが印象的。


それから、井上さんが最も悩み苦しむという(たぶん漫画家なら皆一緒だと思うけど…)ネームを創る作業についてもカメラは追っている。ほんと孤独な作業らしい。彼は一人キャラクターと向き合って物語を紡いでいく。

常に彼らが僕の中に生きてるってわけじゃないと思うんですけど、話を作ろうってしたときにそこに僕が迎えにいって「どうですか?」って聞いたら「そうだ」っていうことですよね。それによってストーリーが決まるっていうか。

自分の奥を掘る。

結局自分のことを描くことになるじゃないですか。自分が思ってもいないようなことを正しいかのようには言えないじゃないですか。結果的には自分の一番奥にあるようなことを引っ張り出してくるしかないんで、1人の時しか本当のところは作れないなっていう気がしてるんですよね。


いやぁ~ほんと井上さんの苦しみようは凄かった。ものすごく痛々しい。「耐えられない」とポツンと言った時の重さっていうものは、凄いものがあったよね。まあ、それだけ良いものを創ろうという表れなんだろうけど。

考えすぎるほど考えてるんだろうなぁ。自分のことを追い詰めるだけ追い詰めてるとも言えると思う。観てるこっちも胃が痛くなっちゃうほどだったもん。完璧主義というか、何か漠然とした理想のようなもの、追い求めるべき何かが彼の中にあるんだろうね。

こぼさない。

こういう感情のとき人はこういう顔をしますっていうサンプルがあるわけじゃないので、自分がその感情になって描くしかないんですけど、彼の感情がちゃんと分かっているかどうか、100パーセントこぼさないっていうか、外さないっていうか。


漫画家さんは、キャラの表情一つとっても命を削って描き込んでいるんだよね。我々読者は、そのカットを数秒見たらすぐ次に行ってしまうというのに…。これからは、もっと大事に舐めるように読まなくちゃ。ほんとこれまでは、漫画に対して勿体無い読み方をしてきたものだとつくづく感じさせられました。

みな、生きている。

キャラクターがちゃんとそのキャラクターの言葉をしゃべるかとか、そういうことなんですけどね。

ディレクター「キャラクターじゃないことは絶対にやりたくない?」

それはできないですね、やっぱり。作品のなかで生きていっているんでキャラクターたちは。そういうことをし始めると死んじゃいますからね。そこは、保つと。


以上のように、とにかくキャラクターを重視している井上さんなんだけど、その最たる言葉は、

ストーリーには興味がない。


だった。どう転んでもいっても、何をしようが何もしまいが、キャラクターさえ人間さえちゃんと描けていればドラマになる。どうやらそういうスタンスらしい。まあ確かにおっしゃる通りですと言わざるを得ない。彼の描く人間プラス心理描写は国士無双だからねぇ。ほんと苦しみ抜いているからこそ、ああいった血が通っているかのごとき人物を生み出しているんだと思うよ。

司会の茂木さんにも「なぜそんなに苦しむ?」って聞かれてたけど、人を斬るところを描いてて、自分も苦しくなったり痛くなったりしなくちゃズルいような気がするって答えてたね。な、なんて真面目なんだ…。


バガボンド(31)(モーニングKC)続いて、ちょうどバガボンドの最新巻の31巻に収録されているシーンについても取材されていた。

降りた、殺し合いの螺旋は。

すごく大事なセリフなんで、言っちゃうともう取り返しがつかないじゃないですか。ここで言っていいのかってあったんですけど。いよいよ終わりに向かうしかないっていう、あれを言っちゃうと。


武蔵が地面に円を描いて言うセリフなんだけど、かなり印象的なシーン(たぶん1つの作品として見ても、結構重要なシーンだと思う) 井上さん自身にも「ここで言っていいのか」という葛藤があったみたいで、なかなか興味深かった。

あと、お杉おばばのエピソードについても語られていて、あのエピソードはお杉おばばに気持ち良く退場してもらおうという、井上さんなりの配慮があってのことなんだろうなと感じさせられたね。復讐だけの半生では無かったんだと、そういうことらしいです。


最後に、クライマックスが近づいているバガボンドについて、井上さんはこう語ってた。

もう終わり近いですね。どんだけこの作品で成長させてもらったかっていうこととかすごいひしひし感じるんで、これをやんなくなったら日々成長するっていう部分がなくなるだろうなと思うんで、終わると分かってからいろいろな思いって出てきますよね。

「バガボンド」描いたから、こういうところに来たわけですからね。あの作品じゃなかったらこういう道はたどって来てないと思うんで、生きるの死ぬのとか、「生きるとは」的なことだったりとか。今の時代に受けようっていう気持ちももちろん勝負論のなかでありますけど、でももっと大事なのは何年経ってもどの世代でも読んだら何か普遍的なものがあるっていうことが大事だと思っているんでね。時代も国も取っ払っても通じるようなもの。人間ってことだと思いますけど、人間を描けてるかどうかじゃないですかね。


何かしら啓蒙したい啓発したいっていう気持ちが、「バガボンド」を描くようになって芽生えてきたのかもなぁ。売れるよりもそちらを重視したいというスタンスなんだろうね。いわゆる漫画家としての域というか場所というかステージというか、井上さんとしての立ち位置がどんどん変化していっている感じがする。

この番組では毎回最後に「プロフェッショナルとは?」って出演者に聞くんだけど、その答えとして井上さんは「向上し続ける人」と答えていた。なんというか、まさにご自身のことを言ってるよね。恐れ入りました、頭が上がりません。僕よりも10歳以上年上なんだけど、ほんとその向上心は凄いとしか言いようがなかったです。自分も頑張らねば…。


おまけ情報として、バガボンドでは武蔵と小次郎は戦うかどうか分からないとのこと。マ・ジ・で・す・か??

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