家族八景 (新潮文庫)人間臭さ、泥臭さ、秘密の数々がこれでもかと渦巻いている、そんな小説。そういった家族の風景をテレパスである主人公・七瀬と一緒に覗き見している感覚がなかなか小気味よい。

「なんて酷い家族なんだ!」という驚きも多いけれど、これが日常という過程も現実に存在するのでしょう。というか、パッと見普通でも何かしらの問題を抱えているのが普通だと言えるのかも。

表面上では分からない、あらゆるトラブルの根を七瀬が浮き彫りにしてしまう

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見せ掛けの平穏とはいえ、トラブルを抱えつつもとりあえずの均衡を保っている家庭がほとんどなんだけど、自分の価値観や都合でそれを壊そうとする七瀬が若干怖く感じてしまった。

自分の正義感というものに絶対の自信を持っているのでしょう。

家庭が崩壊しようが全く罪悪感がない。自分勝手のようにも見えるものの、そこはまだ18歳の女の子。他人のプライバシーを見放題とは言っても、まだまだ視野が狭いのかもしれない。


★聖人君子はこの世に存在しない
しかしながら、自分の能力の限界や可能性に興味があるとして、他人を実験モデルにしてみたり、精神を圧殺→発狂させてみたり、視野が狭いという言葉だけでは済まされないこともしているのが何とも言えないですな。

でも、そんな七瀬の餌食?になってしまう人間というのも、なかなかの胸糞悪さを持っていたりするので、さもありなんと思えなくもないものだ。

正直な話、“根っこから良い人”という人間は本書にまったく登場しないので、どうしたって七瀬の方を応援する気になるというものです。というか、そもそも聖人君子という感じの人ってこの世に存在しないのかもしれないけれど。

人当たりもよく非常に誠実な人であっても、心の中では何を考えているか分からないものだしね、実際問題。


★人間不信にならないのか心配
それにしても、これだけ人間の本心を垣間見ながら生活していると、人間不信にならないのか心配にもなってくる。こんな生活を続けていたら、自分自身が発狂しそうな気がしてならないや。

もし僕がテレパスだったとしたら、非常時以外は掛け金を下ろした状態で普通の生活をすると思うけどなぁ。好奇心はあれど、嫌なものは見たくはないことだしね。

でも、物事の分別がつく前からこういった能力を持っていると、それが当たり前になってしまい、彼女としてはあらゆる雑音も含めて日常という感じなのかもしれない。

そりゃあ、強くなるわけだ。








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