虐げられた人びと (新潮文庫)2組(や、3組か?)の父娘の確執のようなものがテーマとなっている本書。

まさにヒューマンドラマ、いわば昼ドラのような展開に、クライマックスあたりは涙なしでは読めないんじゃなかろうか。少女の告白、親子の邂逅にウルッときてしまう。

そのくらいドストエフスキー作品としては初心者でも入っていきやすい内容。思想的な論戦もほぼないし、五大長編によく出てくる宗教的な分かりにくさもなかったように思う。

【スポンサードリンク】


とはいえ、五大長編では定番となっている個性的な悪役というものも本書には出てくるので、罪罰・カラ兄などが長過ぎて読む気にならないという人も、本書によりそのエッセンスなどを多少は感じられるような気がする。

ドストエフスキー作品は、ある種キャラクター小説であるということも理解出来ることでしょう(モブキャラも味があっていいのです)


★貴族内ヒエラルキーも複雑
しかしながら、本書の悪役であるワルコフスキー公爵も、ほんと良いキャラしているとしか言いようがない。下劣、醜悪、厚顔、道化。これで貴族なんだから、性質が悪いことこの上ない気がする。

や、貴族だからこそ彼のような2面性を持っている人間も少なくないのかもなぁ。社交界という場にも政治があるわけだし、そこを上手く立ち回るために頭を働かせないことには権力を持てないわけだ。

中には育ちが良すぎて、これでもかというくらい“おっとり”した性格の貴族様もいるわけだけど、そういった人種はそもそも野心なんて持たなくても初めから権力を持っていたりする。貴族内ヒエラルキーも複雑だと感じざるを得ないですな。


だけど、ある意味ワルコフスキー公爵のような生き方も憧れではある、正直な話。色んな遊びを知っているわけだし、人生を退屈することもなさそうだ。

彼のことを軽蔑するのは容易いけれど、学ぶべきところも多い気がする(妻娘を捨てたのは許せないけどね)


★病気でもおちおち寝ていられない主人公
それにしても、主人公はほんと「良い人」という感じで、周りのたくさんの人間から頼られまくっているものだ。どんどんトラブルを持ってこられてしまうから、振り回されてばかりで不憫に思えてならない。

そもそも彼も25歳にして病気により死期も近いという初期設定があったというのに、病気でもおちおち寝ていられないような頼られっぷりですな。ふらふらになりながらも奔走するしかない宿命。

彼自身も虐げられているのかもしれない。








Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

« »

Post Navigation