文庫版 鉄鼠の檻 (講談社文庫)先月「魍魎の匣」をなんとなく再読したんだけど、それより前々から読み返したいと強く思っていたのが本書だったりします。

禅の歴史をはじめとして宗教史のようなものも語られるなど、ほんとに興味深い内容。以前読んだ時からずいぶん時間が経っているのでストーリーはあまり覚えていなかったんだけど、この浮世離れした何とも座りの悪い状況に圧倒されてしまう。

まさに治外法権的な場所と言えるのだろうね、お寺って。

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世間の常識がまったく通用しない、言わば異界。何かが変、分からないことが分からない、あまりにも虚構っぽい状況。相手を異分子扱いしていると、気付けば自分が異分子になっていたという現実

禅という特性上、心の領域に入り込んで事件を解決しようとすると、自分がそこに取り込まれてしまう危険性がある。さすがの京極堂も、今回ばかりは一筋縄ではいかなかった模様。

本来関わるべきではなかったというか、そもそもが同じ境界に住んでいる人間ではなかったということなのでしょう。一つの物差しで計れるものではなかった。


ここから完全ネタバレ

★自分の価値観の中だけで生きてきた老人
しかし、齢100歳ほどの爺さんが連続殺人をしていたとか凄過ぎるとしか言いようがない。錫杖(しゃくじょう)による一撃で犯行を重ねていたとか、なんという怪力。山に住んでいたら体力がつくということなのだろうか。

そして、誰にもバレずに行っていたというのも凄いものだ。まあ、いわゆる閉鎖空間においての犯罪なので、露見しにくいというのもあったのだろうね。


言わば陸の孤島、檻の中でずっと暮らしていた人間。そんな彼に世間の常識なんて通用するわけもない。彼は彼の価値観の中だけで、これまで長く生きてきたわけだから……。

そういった檻に、一般人が社会常識を持ち込んでしまったことで、ひとたび彼が行ったことが犯罪というものに摩り替わってしまった。とある社会の事案を、後からやってきた別の社会の法律で縛ってしまってもいいものなのか? 色々と考えさせられるものです。


★おんもらきとの類似性
たしかシリーズ第8弾「陰摩羅鬼の瑕」でも、死の捉え方の違いというものが大きなテーマになっていたように思うけど、今回もそれと同じようなことなのだろうなぁ。獲得してきた価値観の違いによる齟齬、非常に悩ましくも切ない。

(言うまでもなく、本書の方が「陰摩羅鬼」よりも早く書かれたものではあるけれど)


それにしても、エリート刑事による挫折からの復活劇みたいなものは、なかなか読んでいて小気味よかった(はじめはすごく鼻につくキャラだけどね)







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