三月は深き紅の淵を (講談社文庫)「謎めいた4部作の小説」をめぐる物語。本書自体も4部作になっており、メタ的な構造も興味深かい。小説内小説、そして本書に描かれた物語。それら内と外の物語にも関連性もあったりするなど、なかなか引き付けられるものがあった。

謎の小説は本当に存在するのか? 誰が書いたものなのか? いつ書かれたものなのか? 謎がわんさかあり、登場人物と読み手を翻弄する。

真実に辿り着いたかと思いきや、するりと指の間から逃げられてしまう感覚。いつまで経っても闇の中。最大限に可能性を残すという意味では、それが結末としては相応しいのかもしれない。

【スポンサードリンク】


結局、真相に辿り着く前の、あーだこーだと皆で語り合っている時が一番楽しいような気もする。

作者の性別はどちらだとか、あの有名作家が覆面で書いているとか、あの作家の子供が親の文体に似せて書いているだとか、あれこれ妄想する楽しさ。

とにかく本書には“本大好き人間”しか登場してこないので、自分以外のそういった人種の思考回路を垣間見ることが出来たこと自体が面白かった。


★恩田陸本人とおぼしき人物
そんな中で、本書の著者である恩田陸本人とおぼしき人物まで登場してくる。もちろん作家として。本書を恩田さんが今まさに書こうとしている描写があったりするので、非常に興味深いものだ。

本書に描かれたいくつかのエピソードが、彼女が出したエッセイに書かれているエピソードと酷似したものもあったりするので、完全に小説家視点の内容になっている模様。

執筆のための取材旅行をしているところなんかは、これも実際に行ったことを書いたものなのだろうか? たぶんそういうことなんだろうなぁ。「作者が主人公」という風にばっちり言及されていたりもするし、なかなか面白い試みをしたものです。


★著者自らが大きくハードルを上げている
それにしても、本書に出てくる「謎の小説=三月は深き紅の淵を」は、それを読んだ人間から“魅了・没頭・惹き付けられる”と概ね高評価を受けているわけだけど、それは明らかに本書を彷彿とさせるものであったり、その後恩田さんが書くことになる小説についての評価だというのに、よくぞ著者自らが大きくハードルを上げたものだと感心してしまう。

本書自体の内容もかなり人を選びそうな気もするし、すっきりと終わる物語でもないので、登場人物によって先に上記のような評価を口に出させるというのは、ほんと思いきったことをしたものだと感じずにはいられない。

でも、個人的には結構好きな部類の内容だったけどね。なかなか面白かったです。


しかし、本書が雑誌「メフィスト」に連載されていたものだとは、ちょっと意外だったかも。








Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

« »

Post Navigation