麦の海に沈む果実 (講談社文庫)久々に学園物を読んだ気がするなぁ。まさに“閉鎖的な学園帝国”といった感じの舞台になっており、読んでいてどこか居心地の悪さを覚えつつ読み進めるほかなかった。

何が起きても不思議ではない、むしろ自然なことに思える。例えそれが殺人事件であったとしても。

なんだかんだで、学校という存在って特殊な空間だと言わざるを得ないものだ。校長のさじ加減でいくらでも不祥事は隠蔽できるし、警察が介入する余地がない。ま、PTAが機能していなければの話ではあるけれど。

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ずっと下の方で闇がうごめいている感覚。心の底にある恐怖に対し、必至にそれに気付くまいと闘っている生徒達。気付いたら最後、自分自身が絡め取られてしまう。

誰も殺人事件の当事者になんてなりたくないのは当然の事で、無知なまま生きていけたらどれだけ幸せなことか……。「ここで一体何が起こっている!?」と探偵脳を働かせてしまうと、色んな意味で均衡を崩してしまうことになるのでしょう。


そういう意味では、記憶喪失な状態で入学してきた主人公は幸せな方だったのかもしれない。事件の真相を知った状態で何年も学園生活なんて送れるはずなんてないんだから。

現に、真相を知っているからこそメンタル的に酷い状態な生徒も複数人登場。結局、そんな彼らもこの学園という特殊空間に対応しきれずに退場してしまうわけだし、校長の自己満足のためにここまで被害者が出ていることを考えると何と罪深い人物なのだと思わずにはいられない。


★主人公のバックボーンに驚愕
そして、最終的に謎に満ちていた主人公のバックボーンが語られることになるわけだけど、これがほんと“どんでん返し”というか、あまりのことに開いた口がふさがらなかったように思う。

ここまで長々と語られてきた物語が一気に吹き飛んでしまった塩梅。記憶を取り戻した後の主人公の性格も一変してしまったように感じるし、なんだか別次元の人間になってしまった印象を受けるものだ。

“守ってあげたい”と思わせるタイプの少女が、ものすごい野心家に変貌、そんな感じ。ちょっとばかし後味のよろしくない終わり方だったかもしれないですな……。


★校長のやり方が胸糞悪い
それにしても、校長のやり方というのが本当に理解出来ない。要するに、自分の子供達を煽り駆り立て、殺し合いをさせていたような感じなわけでしょ? それが後継者争いというもっともらしい名目をつけていたという点も非常に胸糞悪い。

たぶん、ほとんどの子供達が校長を尊敬ないしは一目置いていたわけなんだから、後継者とならずとも将来的には良き手足として扱えるようになるだろうに、なぜ間引きをしてしまうのだろうか……。絶対、自分の信奉者ばかりを周りに置いておいた方がやりやすいと思うんだ。

とはいえ、校長自身が退場した後に再び骨肉の争いが起きる可能性もあるわけだから、それで今回のようなやり方をしたということなのかもしれないなぁ。なんだか、どこぞの社会主義国家の話にも感じてしまう。








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