月の裏側 恩田陸
特に事前情報など入れず読み始めたんだけど、本書ってミステリ&ホラー、そしてSF? といった感じなのだろうか? 色んな要素が入り込んでいてそれなりに面白かったように思う。

何かが水面下でうごめいている、それがなかなか表立って来ないところが奇妙で怖ろしい。こういう雰囲気を持っている作品が個人的には好みなんだよね。

「この世の中には説明出来ないことと、説明しなくていいことがある」という台詞が本書にあるように、世界の禁忌のようなものに気付いた時の人間の行動が非常に興味深かった。

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その世界の禁忌というのが、「生命体としての我々は、『ひとつ』になることを望む時期に来ている」といったようなことで、割とSFではベタなネタなのが何とも言えません。

最近では、漫画「アイアムアヒーロー」でも同じような方向性に進んでいっていることだし、人間の進化の先というのは多様性から画一性といった風に、行き着く先は決まっちゃっているのかなぁ? その辺がちょっと気になってしまった。




ただ、他作品ではだいたいそれがクライマックスに起きることなんだけど、本書ではずっとその問題と戦うことになるので、多少違ったテイストで読むことができるから悪くないんじゃなかろうか。

こういった使い古されたネタを、かなりの読書家でもある恩田さんがどう料理するのかと思ったら、ちょっとホラー要素の濃い目な作品になりましたという感じなのでしょう。

盗まれた人、その“人形の山”が描かれたシーンなんかは背筋が凍る思いです……。


そのプログラム(?)が発動するトリガーは何だったのか?
それにしても、人類というか、生命の真実として『ひとつ』になることを望んでいるのなら、なぜもっと早く『ひとつ』にならなかったのだろう? そもそも、そのプログラム(?)が発動するトリガーは何だったのか?? その辺が気になって仕方がない。

ここまで人が自我を持つようになってから『ひとつ』になるのでは、ちょっと可哀想過ぎるでしょう。本書のように真相に辿り着いてしまう人が出てきちゃうわけだから、知ってしまった人の絶望感たるや計り知れないわけで……。

生命に多様性が生まれる前に『ひとつ』になってしまえば誰も不幸にはならないのに、なぜどの作品においても一度は多様性というものを経験してから『ひとつ』になろうとするのだろうか


やっぱり、本書にも「幼年期の終わり」のようにオーバーロード的な存在がいて、人間の進化(?)を管理しているのかもしれないなぁ。それぞれに自我を持たせておくと、気付いたら収拾が付かなくちゃったので、もういっそのこと『ひとつ』にしちゃうね? ということなのかも、なんとなく。




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